ドットブロット法を用いたアカバネウイルス分離株の抗原性の比較
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要約
アカバネウイルス(OBE-1株)の異なった中和エピトープを認識するモノクローナル抗体を用いて,ドットブロット法でアカバネウイルス分離株63株につ
いて,株間の比較を行ったところ,分離株は5つのグループに分けられた。ドットブロット法は短時間に少ない抗原量で株間の抗原性の比較が行えることから,
多数の分離株の抗原性を解析できることが明らかとなった。
- 担当:家畜衛生試験場九州支場臨床ウイルス研究室
- 連絡先:099(268)2078
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:研究
背景・ねらい
アカバネ病はアカバネウイルスの感染によって起こる牛,めん羊および山羊の流・早・死産と先天性の関節弯曲症,水無脳症を特徴とする症候群であるが,近年ウイルスの病原性と抗原性の変化が疑われている。従来,アカバネウイルスの抗原性の比較はモノクローナル抗体を用いたELISA,中和試験および血球凝集試験により報告されている。しかし,抗原性の比較を行うためには多数の分離株を用いる必要があり,ELISAでは精製ウイルス抗原を必要とするなど,いずれも非常に煩雑であり,比較できる株数が限られる。そこで,アカバネウイルス OBE-1株に対する中和モノクローナル抗体を用いて競合ELISA を行い,ウイルスの中和エピトープの同定を行った。ついで,アカバネウイルスOBE-1株の異なった中和エピトープを認識するモノクローナル抗体を用いて,ELISAに変わる簡便かつ迅速な株間の比較法としてドットブロット法の検討を行った。さらに,アカバネウイルス分離株63株について,ドットブロット法で株間の比較を行った。
成果の内容・特徴
- アカバネウイルスに7つの中和エピトープ(A1,A2,B,C1,C2,DおよびE)が存在することが判明した。これら7つの中和エピトープを認識するモノクローナル抗体を使用し,分離株に対するELISAを実施したところ,それぞれのモノクローナル抗体で異なった反応を示した。
- モノクローナル抗体を用いたドットブロット法による株間の比較は,ELISAによる成績と類似した結果を示した。また,ELISAのように抗原を精製濃縮する必要がなく,短時間に少ない抗原量で株間の抗原性の比較が行えることが判明した。
- アカバネウイルス株間の抗原性をドットブロット法で比較したところ,OBE-1株に代表されるパターン(パターン1)のグループ,JaGAr39株(パターン2)のグループ,Iriki株(パターン3)のグループ,JaGAr39株とIriki株の中間と考えられるパターン(パターン4および5)のグループおよびどのパターンにも属さないグループの5つに分けられた。パターン2を示した株は1974年に分離された株の他に1990年前後に多く,パターン3を示した株は1985年前後に集中していた。パターン4および5を示した株は1977年,1987年前後および1994年前後に多かった。
(表)
(図)
(写真)
成果の活用面・留意点
ドットブロット法は短時間に少ない抗原量で株間の抗原性を比較できることから,多数のアカバネウイルス分離株の抗原性を解析することが可能となった。アカバネ病の予防法の確立には,広範囲な地域からウイルスを分離し,抗原性を解析することが必要になることから,今回検討したドットブロット法は大いに役立つことが期待される。しかし,ウイルスを広範囲な地域から分離・収集するには多大な労力を要するため,簡便なウイルス分離法を検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:牛異常産関連アルボウイルスの抗原変異に関する研究
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成9年度(平成7年度~平成9年度)
- 発表論文等:
- 第43回ウイルス学会講演要旨集
- 第120回日本獣医学会講演要旨集
- 第121回日本獣医学会講演要旨集
- Yoshida K.&T.Tsuda. Rapid detection of antigenic diversity of
Akabane virus isolates by dot immunobinding assay using neutralizing
monoclonal antibodies. Clin.Diagn.Lab.Immunol.,5:192-198(1998)