下痢発症新生子牛における好中球化学発光能の低下

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要約

生後6日齢で下痢を示した子牛と健康な子牛の好中球化学発光能を比較した。その結果,下痢発症子牛では健康子牛に比べ,出生時から28日齢まで一貫して化学発光能が低いことが判明した。

  • 担当:家畜衛生試験場病態研究部病態生理研究室
  • 連絡先:0298(38)7810
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:牛
  • 分類:研究

背景・ねらい

子牛の出生後,下痢や肺炎などの感染性疾病が多発する。この原因の一つとして,新生子牛の生体防御機構が未熟であることがあげられる。そこで,貪食白血球の貪食・殺菌機能測定法の一つである化学発光能測定法を用い,出生時から28日齢までの子牛の貪食細胞機能の動態を調べた。また,下痢発症によってその機能がどのような修飾を受けるかを調べた。

成果の内容・特徴

ホルスタイン新生子牛を用い,出生直後(生後2時間以内),生後3日,7日,14日及び28日齢に採材を行った。下痢の判定方法として,生後6日齢の糞の乾物重量が15%以下を下痢と判定した。測定項目は,血液化学発光能(血液CL能),好中球化学発光能(好中球CL能),白血球数及び血漿コルチゾール濃度とした。血液CL能は血液50μlにHepes Eagle's-MEM(細胞浮遊液)450μl,ルミノール(増光剤)10μl及びザイモザン(細胞刺激剤)10μlを加え化学発光測定器(ベルトールド社,Multi-Biolumat、LB9505C)を用いて測定を行った。好中球CL能は血液から分離調製した好中球画分8x104個/200μlにルミノール10μl及びザイモザン10μlを加え,血液CL能と同様に測定した。

  • 血液CL能は,健康群では3日齢に一過的な低下が起こったが7日齢以降は回復した。一方,下痢発症群では出生直後のCL能が健康群に比べて著しく低く,その状態は28日齢まで続いた(図1)。
  • 白血球数は,健康群・下痢発症群とも3日齢に一過的に減少した。健康群の白血球数は7日齢に回復したが,下痢発症群では回復が遅延した(図2)。
  • 血液を細胞画分し,好中球CL能を調べた。下痢発症群の好中球CL能は健康群に比べて出生時から一貫して低かった(図3)。
  • 血漿コルチゾ-ル濃度は,健康群では出生直後が最も高く,その後28日齢までに急激に低下した。下痢発症群では,健康群に比べて低下の度合いが緩やかであった(図4)。以上のように,生後6日齢で下痢を起こした子牛は,起こさない子牛に比べて出生時の段階から血液CL能及び好中球CL能の値が低く,その後も回復が遅れることが明らかとなった。

成果の活用面・留意点

出生後1週間前後に下痢を起こすような子牛は,出生時の段階から好中球機能の低い子牛が多いことが判明した。したがって,好中球機能の測定は,下痢症発生予察のための補助的診断指標となることが期待される。

具体的データ

図1.ホルスタイン新生子牛の出生後の血液化学発光能の変動 図2.ホルスタイン新生子牛の出生後の白血球数の変動

 

 

図3.ホルスタイン新生子牛の出生後の好中球化学発光能の変動 図4.ホルスタイン新生子牛の出生後の血漿コルチゾール濃度の変動

その他

  • 研究課題名:幼若家畜の初期感染防御における好中球機能の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度~平成9年度
  • 発表論文等:Proceedings in 77th Conference of Research Workers in Animal Diseases(USA), p.45(1996)