イムノPCR法による異常プリオン蛋白質の検出
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要約
イムノPCR法を用いた異常プリオン蛋白質(PrPSc)の検出を行った。本法では6pgのPrPScが検出され,従来法であるウエスタンブロッティング法と比べて約100倍高感度であった。 本法はPrPScの微量検出とプリオン病の診断への応用が期待される。
- 担当:家畜衛生試験場ウイルス病研究部ウイルス生態研究室
- 連絡先:0298(38)7841
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:家畜類
- 分類:研究
背景・ねらい
英国における牛海綿状脳症(BSE),新変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病(nvCJD)の発生および1996年3月に英国政府が行った両者の関連を示唆する報道により社会的な混乱が生じた。これらの疾病はプリオン病とも呼ばれている。牛は畜産物などの食品ばかりでなく,医薬品,化粧品の原材料としても利用されている。プリオン病の予防および治療法は皆無であり,食品,医薬品等への感染性プリオンの混入を防ぐことが唯一の対策と考えられる。そのためには,これら製品中の異常プリオン蛋白質(PrPSc)の高感度検出法の確立が必要となる。迅速かつ高感度なPrPScの検出を目的として,イムノPCR ( polymerase chain reaction ) 法の応用を試みた。
成果の内容・特徴
- イムノPCR法によるPrPSc検出系の確立
イムノPCR法によるPrPScの検出系を確立した(図1)。PrPScをマイクロプレートに固相化させ,抗プリオン蛋白質(PrP)抗体と反応を行った。抗原-抗体複合体の検出はPCR法による標識DNAの増幅を指標とした。
- 分離精製したPrPScの検出限界の測定
精製したPrPScのウエスタンブロッティング(WB),固相酵素免疫測定法(ELISA),イムノPCRによる検出結果は図2のとおりである。WB,ELISAの検出限界はそれぞれ約3ng, 60pgであったが,イムノPCRでは約6pgまで検出可能であった。
- マウス脳乳剤中のPrPScの検出
スクレイピー感染,非感染マウスおよびプリオン遺伝子(Prn)欠損マウス(Prn-/-)の脳乳剤をプロテイナーゼ処理後,イムノPCRによる検出限界を調べた結果を図3に示す。スクレイピー感染マウスでは抗原希釈倍率5,000倍まで明瞭な反応が認められた(図3A)。非感染マウスおよびPrn-/-マウスでの反応は微弱またはまったく認められなかった(図3B,C)。これらのことから,未精製サンプルからのPrPSc検出も可能であることが示された。
成果の活用面・留意点
今回得られた成果により,イムノPCR法は異常プリオン蛋白質の微量な検出法として有用であることが期待された。今後,本法の検出感度の向上および診断法,さらにはBSEへの応用について検討する必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:人及び動物のTSEに関する緊急研究 プリオン病関連蛋白質の抗原性状の解析
- 予算区分:科技庁(TSE緊急研究), 官民交流共同(株式会社ニッピ)
- 研究期間:平8
- 発表論文等:1.第45回日本ウイルス学会総会 2.特許申請中(特願平9-77774)