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マクロファージ内で増殖し,抗原提示および免疫誘導が可能で,さらに好中球を活性化しうる原虫生ワクチンを開発する基礎研究として,インターロイキン -8(IL-8)遺伝子導入リーシュマニア原虫を作製した。作製した遺伝子導入リーシュマニア原虫では生物学的活性を保持したイヌのIL-8が発現してい ることが確かめられた。
リーシュマニア症は熱帯から温帯にかけて世界的に広く分布するイヌおよびげっ歯類を主要な保虫宿主とする人獣共通感染症である。世界保健機関(WHO)は世界から撲滅すべき6大感染症の一つに本症を挙げその研究を強力に推進するよう推奨しているが,ワクチンを含む有効な予防法はまだ開発されていない。リーシュマニア症の浸淫地域である中央アジアや南米では,生活習慣の上からヒトと密接な関係を持つイヌが本症の主要な保虫宿主と考えられている。リーシュマニア原虫(Leishmania)は脊椎動物宿主体内ではマクロファージ内でのみ増殖が可能であり,好中球内では増殖することができない。しかし,病変部位には好中球の浸潤がほとんど見られず,好中球による原虫排除機構が有効に機能しているとは考えられない。これらのことから,本研究ではマクロファージ内で増殖し,抗原提示および免疫誘導が可能で,さらに好中球を活性化することができるワクチンとして,インターロイキン-8(IL-8)遺伝子導入リーシュマニア原虫を作製し,主要保虫宿主のイヌを対象に感染の拡大・拡散を防ぐことを目的とした。
感染免疫が防御の主体となる原虫病では,原虫自体を運び手として目的とする抗原を本来の感染プロセスを通じて宿主に提示する技術がワクチン開発の鍵とされている。今回得られた成果は,原虫による外来遺伝子の発現とトランスジェニック原虫のワクチンとしての利用に向けての基礎データとなる。また,保虫宿主であるイヌに対するワクチン開発は,ヒトでの疾病対策としても有効である。