血清硝酸イオン濃度の測定法
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要約
「飼料分析基準」の飼料中硝酸塩分析法を改変し、高速液体クロマトグラフにより血清硝酸イオン濃度を高精度に分析する方法を開発した。また、市販の簡易測定装置(RQフレックス)およびグリース法キットの応用についても検討した。
- 担当:家畜衛生試験場 飼料安全性研究部 毒性薬理研究室
- 連絡先:0298(38)7821
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:普及
背景・ねらい
最近になって飼料の輸入量が増加するにつれ,輸入粗飼料の中に硝酸塩含量の高いものが散見されるようになり,これが原因と思われる硝酸塩中毒発生例も報告されるようになった。一方,急性中毒症状が現れない程度の比較的低濃度の硝酸塩を継続的に摂取した場合,慢性の中毒症状が現れるという指摘があるが,この点についての明確な結論は得られていない。硝酸塩中毒の病態を把握するためには,血清硝酸塩の測定が必須であるが,簡便で高精度な方法がなかった。そこで,血清硝酸塩の測定法について検討した。
成果の内容・特徴
- 平成7年に「飼料分析基準」が改正され,高速液体クロマトグラフを使った飼料の硝酸塩分析法が定められた。そこで,この方法と同じカラムを用いて血清硝酸イオン濃度を測定する方法を検討し,
図1の方法で測定できることを明らかにした。
- 研究室レベルで,高速液体クロマトグラフ法と同精度の分析をより簡便に行うため,キャピラリー電気泳動法を検討し,
図2の方法を確立した。高速液体クロマトグラフ法との回帰式は,Y = 0.94X + 0.22, R2=0.999 であった。
- 高速液体クロマトグラフを使わない,簡便な測定法についても検討した。
- グリース反応を応用した市販キットは,キャピラリー電気泳動法に比して測定値が高く出る傾向にあった(図3)。正常血清レベルの濃度(硝酸態窒素として0.5μg/ml前後)では検出限界に近く,測定値にばらつきが見られた。
- RQフレックス法は,血清を除蛋白することなく分析可能であるが,検出感度が低く,正常血清では測定不可能であった。また,測定可能濃度域ではキャピラリー電気泳動法に比べて測定値が低く出る傾向にあった(図4)。
成果の活用面・留意点
高速液体クロマトグラフ法,グリース法キット,RQフレックス法の特徴は以下のとおりである。現場ではこれらの方法を適宜選択することにより効率的な診断が出来るものと思われる。
- 高速液体クロマトグラフ法は,高精度で高感度な分析が可能であるが,高価な機器が必要。
- グリース法は簡便で多数の試料の同時分析が容易であるが,測定値が高めにでる。また,一度調製した試薬の有効期間が短く,少数試料の分析では不経済である。
- RQフレックス法は測定値が低くでるが,急性中毒事故例の現場での簡易診断には有用である。
具体的データ




その他
- 研究課題名:飼料中硝酸塩の牛に対する慢性毒性の検討
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成8年~平成10年
- 発表論文等:
1.第121回日本獣医学会講演要旨集 ,p.215(1996)
2.畜産技術,499 : p.38(1996)