豚水胞病ウイルス(SVDV)の病原性遺伝子の解析
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要約
豚水胞病ウイルスの病原性遺伝子を病原性及び非病原性株の感染性cDNAクローンを用いたキメラウイルス及び部位特異変異ウイルスを作出することにより解析した。この結果,構造蛋白VP1の1アミノ酸及び2Aプロテアーゼの1アミノ酸が病原性に関与することが明らかになった。
- 担当:家畜衛生試験場 海外病研究部 診断研究室
- 連絡先:042(321)1441
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:豚
- 分類:研究
背景・ねらい
豚水胞病ウイルス(SVDV)病原性J1'73株はIBRS-2細胞にて大型のプラックを形成し,感染試験において豚の四肢,鼻鏡及び舌に水疱病変を形成
する。一方,非病原性H/3'76株は小型のプラックを形成し,感染試験において水疱形成が認められない。これまで,in
vitroでの生物学的マーカーであるプラックサイズの規定遺伝子の解析を行い,構造蛋白VP1-132のアミノ酸とウイルスプロテアーゼ2A-
20のアミノ酸が関与することを確認した。今回は,プラックサイズ規定遺伝子の解析のため作出した種々のキメラウイルス及び部位特異変異ウイルスの豚感染
試験を行うことにより,本ウイルスの豚への病原性を規定する遺伝子部位の解析を行った。
成果の内容・特徴
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病原性J1'73株の感染性cDNAクローン(pSVLSJ1)及び非病原性H/3'76株の感染性cDNAクローン(pSVLS00)を互いに組換
え,Cos-7細胞にトランスフェクトすることにより得られた6株のキメラウイルスの豚感染試験を行い,その病原性を確認した。病原性のコントロールとし
ては両株の感染性cDNAクローン由来ウイルス(vSVSLJ1及びvSVLS00)を用いた。その結果,プラックサイズと同様に構造蛋白VP3の一
部,VP1及び非構造蛋白2Aの一部を含むBst1107I-BssHII領域が豚への病原性にも関与することが確認された(図1)。
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本領域には,8カ所のアミノ酸相違があり,その中で構造蛋白VP1-132と2Aプロテアーゼ2A-20の部位の2アミノ酸がプラックサイズを規定するこ
とを確認した。そこで,両部位を非病原性株から病原性株へ,あるいは病原性株から非病原性株のアミノ酸に変異させた部位特異変異ウイルス
vSVLS104/201MJ1及びvSVLS104/201M00の豚感染試験を行った。その結果,vSVLS104/201MJ1接種豚全頭に水疱の
形成が確認され,vSVLS104/201M00接種豚には水疱形成が認められなかった(図1)。
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以上の成績から,構造蛋白VP1の1アミノ酸(VP1-132)とウイルスプロテアーゼ2Aの1アミノ酸(2A-20)はin
vitroでの生物学的マーカーであるプラックサイズと同様に豚への病原性にも関与することが明らかになった。
成果の活用面・留意点
SVDVの病原性関与遺伝子が特定され,この成績は本病の防除法の開発に活用される。
具体的データ

その他
- 研究課題名:豚水胞病ウイルスの病原性関連遺伝子の特定及び機能解析
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成10年度(平成9年度~平成12年度)
- 発表論文等:
1.第126回日本獣医学会講演要旨集, p.22 (1998)
2.J. Virol., 73 : 2710-2716 (1999)