豚インターロイキン18(IL-18)遺伝子のクローニングとその組換え蛋白質の発現

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要約

LPSで刺激した豚肺胞マクロファージのTotal-RNAよりcDNAを作製し,3'RACE法により豚のIL-18の完全長のcDNAをクローニングして,塩基配列を決定した。さらに,大腸菌およびバキュロウィルス発現系で豚IL-18組換え蛋白質を作製した。

  • 担当:家畜衛生試験場 製剤研究部 生理活性物質研究室
  • 連絡先:0298(38)7857
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:生体防御
  • 対象:豚
  • 分類:研究

背景・ねらい

インターロイキン18(IL-18)は,IL-12との相乗作用によるIFN-γの発現誘導,ナチュラルキラー細胞活性の増強,Fasリガンドの発現の増 強,GM-CSFの発現の誘導等の生物学的活性を有することが報告され,細胞性免疫,アポトーシス等に関与するサイトカインとしてその生理学的役割が注目 されている。本研究では,豚における様々な疾患の病態形成におけるIL-18の役割およびその予防・治療への利用の可能性を検討するため,豚IL-18の cDNAのクローニングおよび大腸菌・バキュロウィルス系での組換え蛋白質の作製を試みた。

成果の内容・特徴

  • LPSで刺激した豚の肺胞マクロファージよりTotal-RNAを抽出し,M13アダプタープライマーを用いて逆転写反応を行いcDNAを合成した。既に 報告されていた豚IL-18の5'部分塩基配列(Genbank accession No.U68701)を基にセンスプライマーを設計し,M13M4プライマーをアンチセンスプライマーに用いて3'RACE法により完全長の豚IL- 18cDNAを得,塩基配列を決定した(Genbank accession No.AB010003)。豚IL-18のORFは579bpであり,35アミノ酸残基からなるリーダーシークエンスを含む192アミノ酸で構成されてい た。ヒト・マウスおよびラットIL-18塩基配列とのホモロジーはそれぞれ,85.2%,73.9%,71.9%であり,アミノ酸レベルではそれぞれ 76.7%,64.7%,61.6%であった。また,その配列内には,Interleukin-1β converting enzyme(ICE)の認識するアミノ酸配列が保存されていた。
  • 豚IL-18組換えタンパク質を作製するため,大腸菌での発現にpQE30(Qiagen),バキュロウィルス系での発現にpVL1392および pAcGP67B(Pharmingen)の両ベクターを用い,常法により組換えタンパク質を得た。SDS-PAGEによりそれぞれの組換え蛋白の発現が確認された。 (図2-A)
  • 抗ヒトIL-18ポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロッティングにより,発現された組換え豚IL-18は,抗ヒトIL-18抗体と交差反応を示すことが明らかとなった。 (図2-B)

成果の活用面・留意点

    本研究により単離された豚IL-18遺伝子および組換え蛋白質の利用により,豚における本サイトカインの生理学的役割が解明されるとともに,IFN-γの発現誘導活性を利用した,細胞内寄生菌等に対する感染防御への本サイトカインの応用が期待される。

具体的データ

図2-A 大腸菌およびバキュロウイルス発現系により発現させた豚IL-18のSDS-PAGE像 B 図2-Aの抗ヒトIL-18抗体によるウェスタンブロッティング像

その他

  • 研究課題名:炎症性サイトカインの制御技術の確立
  • 予算区分:連携開発(サイトカイン)
  • 研究期間:平成9年度~平成14年度
  • 発表論文等:
      1.第63回日本インターフェロン・サイトカイン学会講演要旨集, p.57(1998)
      2.第126回日本獣医学会講演要旨集, p.152(1998)