脳内TNF-αによる牛の第四胃運動調節
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要約
牛の側脳室内への脳カテーテル設置方法と無拘束意識下で長期間胃腸運動を導出できるForce transducer法を確立した。さらに,牛では脳内TNF-αは中枢神経系を介して第四胃運動を抑制的に制御することが示された。
- 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 病態生理研究室
- 連絡先:0298(38)7810
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:研究
背景・ねらい
近年,牛の第四胃変位は増加し臨床的にも重要な消化器障害になっている。第四胃変位は,第四胃運動の低下による第四胃の拡張とガスの蓄積が原因と考えられているが,その第四胃の運動抑制が起こる仕組みについては現在のところ不明である。一方,ラットの脳内にTNF-αを投与すると採食量の低下や胃運動抑制
が起こることが最近報告されており,サイトカインが中枢神経系を介して消化器系の制御に重要な役割を果たしていることが指摘されている。本研究では牛の第四胃運動の抑制機序を探るため必要な,脳内カテーテル設置方法および胃腸運動の長期間導出方法を確立するとともに,脳内TNF-αによる牛の第四胃運動制
御について検討した。
成果の内容・特徴
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牛の脳脊髄液を経時的に採取するための脳カテーテルを作製し,側脳室内に設置手術を実施した。脳室内X線造影により側脳室内への留置が確認されたものは,脳脊髄液の採取に使用できた
(図1)。
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牛を無拘束意識下で長期間の第四胃運動導出を行うためのセンサー(Force transducer)を作製し,このForce
transducerを牛の第一胃,第四胃,結腸の漿膜面に取り付け,消化管運動の導出を行ったところ,約1カ月の連続記録を行うことができた(図2)
。
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6頭の子牛を用いて,脳内TNF-αによる牛の第四胃運動制御について調べた。子牛の側脳室内にrhTNF-αを2-20μg投与したとこ
ろ,rhTNF-α20μg投与では第四胃運動は3.5時間後に停止した。第四胃運動の停止は90分間続き,rhTNF-α投与後8時間にはほぼ投与前の
状態に復帰した。オートクレーブ処理したrhTNF-αまたはPBSを側脳室内に投与した場合,胃運動に変化は認められなかった
(図3)
。以上の結果から,牛の脳内TNF-αは中枢神経系を介して第四胃運動を抑制的に制御していることが示唆された。
成果の活用面・留意点
牛における胃腸運動の長期間導出方法と脳内カテーテル設置方法の手技が確立できたことにより,今後牛の第四胃運動抑制と中枢神経系との相互関係解明ならびに胃運動障害防除技術の開発が期待できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ストレスによる牛の第四胃運動障害機序の解明
- 予算区分:経常研究
- 研究期間:平成8年度~平成10年度
- 発表論文等:
1.第123回日本獣医学会講演要旨集, p.241(1997)
2.The Proceeding of 78th CRWAD (USA), p.105(1997)
3.第126回日本獣医学会講演要旨集, p.100(1998)