子羊における羊ヘルペスウイルス-2の伝播様式
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要約
羊型悪性カタル熱ウイルスの自然宿主(羊)での生態を解明するため,出生から約10ヶ月間にわたり羊ヘルペスウイルス-2の動態と抗体の変動を調べた。伝播経路は群内での水平感染の割合が高いことが示唆された。また,抗体産生はかなり遅く,遺伝子検出から2~8ヶ月遅延することがわかった。
- 担当:家畜衛生試験場 北海道支場 臨床微生物研究室
- 連絡先:011(851)5226
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:緬羊
- 分類:研究
背景・ねらい
羊型悪性カタル熱の原因ウイルスは分離されていないが,発症動物由来株化細胞よりウイルス遺伝子の一部と考えられる塩基配列が単離され,羊
ヘルペスウイルス-2(Ovine
Herpesvirus-2;
OHV-2)と呼ばれている。このウイルスは羊に対する病原性はないが,牛や鹿などが感染すると悪性カタル熱を発症し致死的な経過をとることが多い。ほと
んどの羊はOHV-2に感染しているが,その感染時期や伝播経路に関しては不明なことが多く,生後ごく初期に母羊から感染するという報告や生後2.5ヶ月
頃に群から離せば感染しないという報告がある。そこで,羊群におけるOHV-2の伝播様式を調べるため,生後から約10ヶ月間にわたりウイルスの動態と抗
体の変動を観察した。
成果の内容・特徴
母羊5頭とその双子羊10頭から,血液・鼻スワブ・母羊の乳汁を定期的に採材し,PCR法によりOHV-2遺伝子を検出した。また,competitive
inhibition ELISA により血清中の抗体を測定した。さらに,生後2.5ヶ月の離乳時点で,無作為に選んだ各双子の内1頭(No.2,
4, 8, 9, 12)を群から隔離し,群内で飼育した他の5頭と比較した。
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分娩前から産後3ヶ月までの観察期間中,OHV-2遺伝子は母羊の白血球から常に検出されたが,鼻スワブ・乳汁からの検出は不安定であった。
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出生時の子羊からは,白血球・鼻スワブともOHV-2遺伝子は検出されなかった。その後,5ヶ月齢までに漸次白血球から検出されるようになり,全頭の感染が確認された
(表1)
。鼻スワブからの検出は白血球より頻度が低かったが,ほぼ同様の結果を示した。子羊の半数は離乳後に感染しており,中には感染時期が2ヶ月ほど差のある双子が認められ,群内での水平感染が示唆された。
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生後2.5ヶ月からの隔離飼育は,感染を遮断できなかった。
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移行抗体は1~5ヶ月齢の間に消失し,6~10ヶ月齢にかけて陽転した(表2)
。移行抗体の有無と感染時期には相関がなく,また遺伝子検出から抗体陽転まで2~8ヶ月も要した。
成果の活用面・留意点
羊群においてOHV-2は水平感染により伝播している可能性が示唆された。牛や鹿への感染対策のため,さらに詳しい検討が必要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:牛,鹿,羊における悪性カタル熱ウイルスの感染様式の解明
- 予算区分:経常(場内プロ)
- 研究期間:平成10年度(平成9~10年)
- 発表論文等:
1.第127回日本獣医学会講演要旨集,p.138 (1999)