実験的チアミン欠乏めん羊における血液化学発光能の低下
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要約
実験的チアミン欠乏めん羊の血液化学発光能(CL能)は,血中チアミン濃度の減少が潜在性チアミン欠乏となる時点から低下した。低下したCL能は,フルスルチアミンの投与によって回復することが判明した。
- 担当:家畜衛生試験場 総合診断研究部 環境衛生研究室 (現 動物衛生研究所 生産病研究部 病態生理研究室)
- 連絡先:0298(38)7810
- 部会名:家畜衛生
- 専門:生理
- 対象:めん羊・乳用牛・肉用牛
- 分類:指導
背景・ねらい
めん羊や牛の大脳皮質壊死症(CCN)として知られるチアミン欠乏症は幼若な家畜に発生しやすく,CCNの発症には至らないまでも,チアミンが欠乏レベルである潜在性欠乏の個体が散見される。チアミンの生体防御機能に及ぼす影響について,反芻動物ではほとんどわかっていない。そこで,多形核白血球(PMN)の酸素依存性殺菌能(殺菌能)の指標であるCL能を用いて,実験的チアミン欠乏めん羊におけるPMNの殺菌能の推移を調べた。
成果の内容・特徴
- 4頭のサフォーク種雄めん羊を供試した。CL能は,血液50µlにHepes Eagle's-MEM 450µl,ルミノール10µlおよびザイモザン10µlを加え,化学発光測定器でPeak CL(cpm)を測定し,CL index=[Peak CL(cpm)/血液50µl中のPMN数]を算出した。
- チアミン拮抗薬のアンプロリウム(APL)600mg/kg/dayを連日投与した2頭のめん羊 (チアミン欠乏めん羊)では,投与14または21日目に血中チアミン濃度は欠乏レベルに減少し た (図1)。 投与により,PMN数がやや減少した。投与21日目にはCL indexは投与前値の60%以下に低下し,以後低く推移した。重度のチアミン欠乏の臨床所見である脳波異常と食欲不振は,投与41日目以降に認められ た。PMNの殺菌能は,臨床的に異常がない潜在性チアミン欠乏の時点から低下していることが 示された。
- 脳波異常と食欲不振を示すチアミン欠乏めん羊に,治療としてチアミン製剤のフルスルチアミン(FT;アリナミン,武田)10mg/kg(体重)の1回投与を行った。投与後2時間からCL indexが上昇し,投与翌日のCL indexはAPL投与前値に近い値となった (図1)。 チアミン欠乏時のPMNの殺菌能の低下は,チアミン投与によりすみやかに回復することが明らかとなった。
- 対照としてAPL600mg/kg/dayの連日投与に加えて,FT50mg/頭を4日毎に投与した2頭のめん羊では,APL投与による血中チアミン濃度の減少はなく,PMN数の減少は見られたが,CL indexは高く維持された (図2)。 APLを投与してもチアミンの欠乏がなければ,CL indexは低下しないことが確認された。
成果の活用面・留意点
チアミン欠乏ではPMNの殺菌能の低下することが判明した。チアミンの血中濃度の維持は,家畜の生体防御機能低下を防ぐためにも重要である。
具体的データ


その他
- 研究課題名:放牧牛における微量栄養素水準が白血球機能に及ぼす影響の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)
- 発表論文等:第128回日本獣医学会学術集会講演要旨集,p.111 (1999)