パラポックスウイルス感染症の迅速診断法の開発
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要約
パラポックスウイルス(PPV)感染症のウイルス学的迅速診断に有用なPCR法を開発した。この方法で,PPV属に属する4種類すべてのウイルスが検出可能であった。また,4種の制限酵素によるPCR-RFLPにより,4種類のPPVの簡便な分類が可能であった。
- 担当:家畜衛生試験場 ウイルス病研究部 ウイルス生態研究室 (現 動物衛生研究所 感染病研究部 ウイルス病研究室)
- 連絡先:0298(38)7841
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛,緬山羊,野生動物
- 分類:普及
背景・ねらい
パラポックスウイルス感染症として,ウシの丘疹性口炎,偽牛痘,緬山羊やニホンカモシカの伝染性膿疱性皮膚炎などが知られ,
監視伝染病に含まれている。いずれの疾病も口腔や口唇部,乳房,乳頭などに丘疹,結節,水疱などが認められ,まれに膿疱,
潰瘍まで進行し,口蹄疫などの海外悪性伝染病との臨床的な鑑別が困難な場合がある。パラポックスウイルス属には,ウシ丘疹性口炎ウイルス(BPSV),
偽牛痘ウイルス(PCPV),伝染性膿疱性皮膚炎ウイルス(ORFV),アカシカパラポックスウイルス(PVNZ)の4種類が知られている。
これら4種類のパラポックスウイルスすべての検出と,他の感染症との類症鑑別に応用できるウイルス特異的な迅速診断法の確立を目的とした。
成果の内容・特徴
- パラポックスウイルス属特異的なPCR法の開発に成功した。この方法により,BPSV,PCPV,ORFV,およびPVNZの4種類の標準株と,
日本国内のウシ,ヒツジ,およびニホンカモシカから分離されたパラポックスウイルス7株すべてにおいて,ウイルス特異的な594bpの バンドが検出できた(図1)。
- ウシ,ヒツジ,およびニホンカモシカの野外発症例の病変部を用い,実際に診断に応用できるか検討した。semi-nested PCRにより,
すべての検体から235bpの特異的なウイルス遺伝子を増幅することができ,野外における迅速診断への有効性が示された(図2および3)。
- 4種類の制限酵素(Xmn I,Pfl MI,Drd I,およびHinc II)処理(PCR-RFLP)により,4種類のパラポックスウイルスのPCR産物はそれぞれ特異的に切断され,簡便に分類することができた。
成果の活用面・留意点
パラポックスウイルス感染症の同定には従来,病理組織学的検索とともにウイルス学的検索として,ウイルス分離が行われてきた。
分離を必要としない方法の開発が成功したことにより,野外における迅速診断が可能となった。現在は,パラポックスウイルス感染症の診断法の一つとして,全
国の家畜保健衛生所の病性鑑定に応用されている。また,PCR-RFLPにより簡便にウイルスの分類が可能となった。
具体的データ



その他
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研究課題名:牛ウイルス性乳頭炎の調査および診断法の開発
- 予算区分:経常研究(場内プロ)
- 研究期間:平成11~12年度
- 発表論文等:1)Inoshima et al., Clin. Diagn. Lab. Immunol., 6: 388-391 (1999)
2)Kuroda et al., J. Vet. Med. Sci., 61: 749-753 (1999)
3)Sentsui et al., Vet. Microbiol., 70: 143-152 (1999)
4)Inoshima et al., Microbiol. Immunol., 44: 69-72 (2000)
5)Sentsui et al., Microbiol. Immunol., 44: 73-76 (2000)
6)Inoshima et al., J. Virol. Methods, 84: 201-208 (2000)
7)Inoshima et al., Epidemiol. Infect., 126: 153-156 (2001)
8)Inoshima et al., J. Gen. Virol., 82: 1215-1220 (2001)