Fluorescent Amplified-Fragment Length Polymorphism(FAFLP)による牛由来 Salmonella Typhimuriumの遺伝子型別

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要約

北海道内で分離された牛由来Salmonella Typhimuriumについて,FAFLPを用いた遺伝子型別を実施した。供試した120株は 4型(A,B,C,D)に型別され,1994年以降の分離株は全てA型に属した。また,多剤耐性DT104を含むA型菌のFAFLPマーカーである142bp断片のシークエンスはP22ファージの塩基配列の一部と相同性を示し た。

  • 担当:家畜衛生試験場 北海道支場 臨床微生物研究室 (現 動物衛生研究所 北海道支所 臨床微生物研究室)
  • 連絡先:011(851)5226
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:乳用牛・肉用牛
  • 分類:普及

背景・ねらい

近年,搾乳牛での成牛型サルモネラ症の発生が増加し,酪農経営に大きな被害を与えている。また,我が国においても家畜由来の多剤耐性Salmonella Typhimurium DT104の分離が報告されている。しかし,分離菌の遺伝子型等に関する疫学的解析は,必ずしも十分に実施されているとはいえない。そこで,北海道内で分離された牛由来S. Typhimuriumに ついて,FAFLPによる遺伝子型別を試みた。

成果の内容・特徴

  • 1977から1999年において,北海道内で分離された牛由来のS. Typhimurium103株及びDT104を含む保存株17株についてFAFLPを用いた遺伝子型別を実施した。FAFLPはAFLPTM Microbial Fingerprinting キット(ABI), シークエンサー(ABI377)およびサーマルサイクラー(ABI)を用いて行い,セレクティブプラ イマーとして EcoRI-A及びMseI-Aを用いた。
  • 供試菌120株において,12のpolymorphic断片が検出され,供試株は17のプロファイルに分けられた (表1, 図1)。 これらのプロファイルはクラスター解析により4型(A, B, C, D)に分類された (図2) 。供試したDT104(10株)は全てA型に属した。
  • FAFLP A型は1991年以前では1株(1/33)のみであったが,その後,分離株におけるA型の割合は次第に増加し,1994年以降に分離された株は全て(51/51)A型となり,サルモネラ症の増加に伴ってその割合が増えていた (表2)。
  • シークエンス解析の結果,A型のマーカーである142bp断片(表1,図1)のシークエ ンスはP22ファージの塩基配列の 一部と相同性(86%)を示した。

成果の活用面・留意点

  • S. TyphimuriumのFAFLPによる型別方法はデーターベース化が容易であるので,野外における本菌の分子疫学的解析方法として有用である。
  • 近年,本菌による成牛型の発生が増加した原因を解明する上で極めて重要な資料と なった。
  • A型菌のマーカーである142bp断片は多剤耐性DT104菌の分子疫学的マーカーとして応用可能であることが示唆された。

具体的データ

表1 S.TyphimuriumのFAFLPによるポリモルフィズム

 

図1 FAFLPによるエレクトロフェログラム

 

図2 FAFLPプロファイルのクラスター解析

 

表2 牛由来S.Typhimurium分離株における遺伝子型の経年変化

その他

  • 研究課題名:酪農環境由来サルモネラの分子疫学的検討
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年~14年
  • 発表論文等:Molecular typing and epidemiological study of Salmonella enterica serotyp Typhimurium isolates from cattle by fluorescent amplified-fragment length polymorphism fingerprinting and pulsted-field gel  electrophoresis. J. Clin. Microbiol., 39:1057-1066(2001)