Brachyspira (Serpulina)感染による反芻動物腸管スピロヘータ症の診断
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要約
Brachyspira (Serpulina)に属する腸管スピロヘータが野生エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)に大腸炎をひき起こすこと,ならびにこの腸管スピロヘータ症がすでに日本の野生エゾシカの間で拡がっていることが示唆された。
- 担当:家畜衛生試験場 北海道支場 臨床病理研究室 (現 動物衛生研究所 北海道支所 臨床病理研究室)
- 連絡先:011(851)5226
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:普及
背景・ねらい
近年,我々はBrachyspira (Serpulina)に属する腸管スピロヘータがウシの赤痢に関与することを報告
し,反芻動物の消化器障害において腸管スピロヘータの重要性を示唆した。しかしながら,その感染経路,体内分布および病原性に関する報告はない。また,
我々が報告した腸管スピロヘータ症罹患例を含め,放牧中のウシは野生動物と接触する機会が多い。そこで本研究では,野生エゾシカにおける腸管スピロヘータ
感染の有無,体内分布および病理学的変化を調査することを目的とした。
成果の内容・特徴
- ウシ用採草地に侵入したため,害獣として殺処分された7頭の野生エゾシカについて剖検,ホルマリン固定後,
常法によりHE,グラム,ワーチン・スターリー染色,抗B. hyodysenteriaeとB. pilosicoli血清を用いたSAB染色,
透過型電子顕微鏡検索を実施した。
- 肉眼的に,7頭中6頭の盲腸と結腸粘膜は肥厚し,びまん性糜爛が認められた。
- 組織学的に,7頭中6頭の盲腸と結腸に,腸上皮細胞と杯細胞の過形成ならびにマクロファージとリンパ球の浸潤を伴う粘膜固有層の水腫を認めた
(表1)。
多数の好銀性スピロヘータが陰窩に認められ,腸上皮細胞および杯細胞への侵入像もみられた。
- 免疫組織学化学的に,抗B. hyodysenteriaeとB. pilosicoli血清を用いたSAB染色で,このスピロヘータは陽性を示した
(図1)。
- 電子顕微鏡学的に,このスピロヘータは長さ6-14µm,幅0.2-0.3µm,4-6個のうねりおよび13本の軸糸をもち,
Brachyspira spp.に類似していた
(図2)。
- これら野生エゾシカの検索結果は,牛腸管スピロヘータ症のものと非常に類似していた。
- 以上の結果からBrachyspiraに属すると考えられる腸管スピロヘータがウシの赤痢と野生エゾシカの大腸炎に深く
関わっていることを示し,また,この腸管スピロヘータ症がすでに日本の野生エゾシカの間で拡がっていること,このスピロヘータによる消化管機能障害がウシ
とエゾシカの新しい疾病となり,同一ないし類似のスピロヘータがウシとエゾシカを含む反芻動物に感染する可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点
この成績は反芻動物の腸管スピロヘータ症の診断予防に活用できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:病性鑑定業務
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年~12年
- 発表論文等:1) Vet. Rec., 146:585-586 (2000)2) J. Vet. Med. Sci., 62:947-951 (2000)