ネオスポラ感染による牛の異常産の免疫組織化学的診断法の確立
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要約
ネオスポラの免疫組織化学的検出のための組織切片前処理法について検討し,最良の検査条件を確立した。
この方法を用いて牛流産胎子におけるネオスポラの分布を免疫組織化学的に検査した結果,脳,腎臓,舌および脊髄でネオスポラが高頻度に検出された。
- 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 感染病理研究室 (現 動物衛生研究所 感染病研究部 感染病理研究室)
- 連絡先:0298(38)7837
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:牛
- 分類:普及
背景・ねらい
ネオスポラ症は,ネオスポラ原虫の感染により引き起こされる異常産(流産,死産,早産,新生牛の異常)を主徴とする牛の疾病である。牛のネオスポラ症は届出伝染病であり,その診断は病理組織学的および免疫組織化学的検査によって行われる(病性鑑定マニュアル第2版,農林水産省畜産局監修)。しかしながら,牛流産胎子におけるネオスポラの分布は十分に知られていない。この研究の目的は,免疫組織化学的検査の最適条件について検討し,さらに牛流産胎子におけるネオスポラの分布を明確にすることにある。
成果の内容・特徴
- ネオスポラの免疫組織化学的検出のための組織切片前処理法(アクチナーゼE法,マイクロウェーブ法,オートクレーブ法) について,実験感染マウスの組織を用いて検討した。その結果,切片を0.1%アクチナーゼEで20分間処理することにより最良の免疫染色結果を得られることが明らかになった。
- 野外の牛流産胎子24頭の肝臓,脾臓,腎臓,心臓,肺,舌,骨格筋,脳および脊髄におけるネオスポラの分布を免疫組織化学的に検査した。その結果,24頭中18頭の胎子でネオスポラが検出され(図1),臓器別の検出率は脳で83.3%,腎臓で33.3%,舌で25.0%,脊髄で21.4%,骨格筋で13.3%,肝臓で11.8%,肺で11.8%,心臓で5.9%および脾臓で0.0%であった(図2)。この結果から,ネオスポラ症の免疫組織化学的診断にあたっては,脳,腎臓,舌,脊髄等を検査する必要があることが示された。
成果の活用面・留意点
牛異常産症例の脳,腎臓,舌および脊髄についてアクチナーゼE前処理法を用いて免疫組織化学的検査を実施することにより,ネオスポラ症の診断が能率的かつ的確に行えるようになった。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ネオスポラの免疫組織化学的診断の高度化
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成12年度(平成12年度~平成13年度)