経皮穿刺による子牛の気管内細菌培養材料簡易採取法

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要約

市販の注射器を用い,滅菌生理食塩水を気管内に無菌的に経皮注入し回収した液を細菌培養材料とする。この回収液を用いることにより鼻腔スワブを培養材料としたときに比べ,原因菌の分離が容易となる。

  • 担当: 家畜衛生試験場 総合診断研究部 病原診断研究室 (現 動物衛生研究所 疫学研究部 臨床疫学研究室)千葉県農業共済組合連合会 中央家畜診療所
  • 連絡先:0298(38)7798
  • 部会名:家畜衛生
  • 専門:診断予防
  • 対象:肉用牛・乳用牛
  • 分類:普及

背景・ねらい

子牛の呼吸器感染症による被害は依然として大きい。呼吸器感染症は様々な微生物によって引き起こされるが,症状の悪化には細菌の関与が大きい。通常,原因菌特定のために鼻腔スワブの培養が行われているが,野外での発生事例の多くを占める軽度~中等度呼吸器症状発症子牛の鼻腔スワブ培養では多種類,多数の常在菌が同時に発育することが多く,原因菌の特定は必ずしも容易ではない。そこで簡便かつ常在菌による汚染が少ない気管内培養材料採取法を工夫した。

成果の内容・特徴

  • 気管が水平になるよう子牛頭部を保定し,採材者は手で頚部中程の気管を確保し,その部位をわずかに引き下げ下方皮膚を消毒する。18ゲージの針を装着し滅菌生理食塩水3mlを含む10ml容の注射器を用意し,下方から経皮的に気管軟骨を避けて針を浅く気管内にさし込み,滅菌生理食塩水を注入し,素早く回収する。気管内穿刺の首尾は注射器内筒を引いたときの注射器内への空気の流入及び滅菌生理食塩水注入直後の発咳により確認できる。また回収液に血液が混入することもあるが,培養には差し支えない。
  • 本法により採取した材料を培養したとき原因菌と推定される菌が純培養状に発育するため,常在菌が多種類,多数発育する鼻腔スワブの培養と比較して,原因菌と推定される菌の分離は極めて容易である(図1,表1)。

成果の活用面・留意点

  • 軽度~中等度呼吸器症状発症子牛の細菌学的検査及び呼吸器感染症集団発生時における的確な原因菌特定に本法は有用性が高い。
  • 培養材料採取のために生理食塩水を使用するときは回収液を冷蔵保存し,可及的速やかに培養することが望ましい。
  • 子牛の頭部にロープをかけ,そのロープの他端を柵等につなぐことにより一人での採材も可能であるが,採材中気管が水平になるよう子牛頭部を保定することが確実な採材に大切であることから,可能であれば二人による共同作業が望ましい。

具体的データ

図1 呼吸器感染症罹患子牛の鼻腔スワブ及び同子牛から無菌的経皮穿刺により採取した気管内培養材料の血液寒天培地における培養結果

 

表1 化学療法直前において呼吸器感染症原因菌と推定される菌が気管材料から分離された野外呼吸器感染症子牛の鼻腔スワブからの同菌分離成績

その他

  • 研究課題名:子牛呼吸器感染症生前診断における鼻汁・鼻腔スワブ培養の有効性の検討
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成12年度(平成10~12年度)