鶏貧血ウイルスVP1遺伝子の394番目のアミノ酸は病原性に関与する
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要約
鶏貧血ウイルスの感染性DNAクローン作製により,強毒及び弱毒クローンを得た。両クローンの遺伝子構造解析の結果,病原性関連遺伝子がVP1の394残基目にあり,グルタミンは強毒,ヒスチジンは弱毒であった。得られた弱毒クローンは弱毒生ワクチンとして有用と思われた。
- 担当:家畜衛生試験場 ウイルス病研究部 発病機構研究室(現 動物衛生研究所 感染研究部 病原ウイルス研究室)
- 連絡先:0298(38)7760
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:鶏
- 分類:研究
背景・ねらい
鶏貧血ウイルス(CAV)は養鶏場に広く浸潤しており,移行抗体を保有しない若齢ヒナに感染し,発育不良,貧血,免疫不全等を引き起こして養鶏産業に経済的損害を与える。本ウイルスの感染防除は種鶏を免疫し,ヒナに移行抗体を付与することで可能となる。しかし現在,明らかな弱毒ワクチン株が存在せず,安全なワクチンの開発が望まれている。本研究では,CAVの病原性に関連した遺伝子部位を明らかにすると共に,有効で安全な弱毒生ワクチンを開発することを目的とした。
成果の内容・特徴
- CAVのAH9410株から感染性DNAクローンを多数作製し,得られたクローン化ウイルスの鶏に対する病原性検査を行ったところ,弱毒及び強毒のクローンが認められた。このことはAH9410株に強毒と弱毒のクローンが混在していたことを示している。
- 弱毒及び強毒性を示すウイルスをそれぞれ3クローンずつ用い,それらの遺伝子構造を比較解析した結果,VP1の394残基目(VP1-394)のアミノ酸が病原性に関与していることが示唆された。
- そこで,弱毒クローン(AH-C140)及び強毒クローン(AH-C364及びA2-C15)について,VP1-394のアミノ酸をそ
れぞれヒスチジン(H)からグルタミン(Q)に変異(AH-C140Q),またはQからHに変異(AH-C364H及びA2-C15H)させ
(図1),得られたウイルスについて病原性が変化するか否かを検査した。
- VP1-394のアミノ酸をQに変異させたクローン(AH-C140Q)はAH-C140に比べて全ての病原性検査項目において明らかに病原性が強くなった。また,VP1-394のアミノ酸がQの全てのクローンは病原性の強さの程度が全て++または+で強毒性を示した(表1)。
- VP1-394のアミノ酸をHに変異させたクローン(AH-C364H及びA2-C15H)は親クローンに比べて全ての病原性検査項目において明らかに病原性が弱くなった。(表1)。
- 以上の結果は,VP1-394のアミノ酸は病原性に関与しており,それがQの場合は強毒で,Hの場合は弱毒の病原性状であることを示している。
成果の活用面・留意点
本研究では,強毒CAV分離株に弱毒クローンが混在しており,感染性DNAクローン技術を応用することにより,弱毒クローンを選抜可能なことを明らかにした。また,VP1-394のアミノ酸をHに変異させることにより,人為的に弱毒ウイルスを作製できることが示された。本研究で用いた弱毒クローンの選抜及び作製技術は遺伝子構造の明らかなCAV弱毒生ワクチンの開発に活用できる。
具体的データ


その他
- 研究課題名:鶏貧血ウイルスの病原性遺伝子の検索・単離
- 予算区分:バイテク(病原遺伝子)
- 研究期間:平成7年度~12年度
- 発表論文等:S. Yamaguchi et al. Identification of a genetic determinant of pathogenicity in chicken anaemia virus. J. Gen. Virol. 82: 1233-1238 (2001)
特許出願審査請求件名:弱毒鶏貧血ウイルス(特開2001-17178)