ブロイラー鶏の腹水症における心臓病変と肝臓病変の相関関係
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要約
ブロイラー鶏の腹水症では,心臓組織病変(心筋変性・線維化,心外膜線維化) 肝臓組織病変(肝細胞変性・肝被膜線維化)が最も高い頻度でみられたが,後者が最も高い頻度でみられる共通病変であった。
- 担当:家畜衛生試験場 病態研究部 非感染病理研究室 (現 動物衛生研究所 生産病研究部 病態病理研究室)
- 連絡先:0298(38)7843
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:鶏
- 分類:研究
背景・ねらい
ブロイラー鶏の腹水症は世界中の養鶏産業に重大な損害を与えている。最近の調査では,世界各国における腹水症の平均発生率は4.5%で,年間10億ドルの損害があると推定している。本課題の目的は本症の病態解明をし,今後の予防対策をたてる上での基礎データとすることである。
成果の内容・特徴
- 野外のブロイラー鶏で死亡した鶏120羽について,肉眼および組織病変の比較を行った。 肉眼的病変より,“腹水症”(腹水の貯留するもの),“心不全症”(心膜水腫あるいは右心拡張があるもの),“その他”(腹水の貯留,心膜水腫,右心拡張のいずれもないもの)の3つの病型に分類した。これらの病型は検査鶏120例中それぞれ,67例(55.8%),40例(33.3% ),13例(10.8%)にみられた。
- “腹水症”の66例中63例(95.5%)に肝臓組織病変[肝細胞変性・壊死 (図1) ,肝被膜の線維化 (図2) ],40例(60.6%)に心臓組織病変(心筋変性・線維化,心外膜線維化)がみられた。“心不全症” の41例中37例(90.2%)に肝臓組織病変,24例 (58.5%)に心臓組織病変がみられた。“その他”の13例中6例(46.2%)に肝臓組織病変がみられ,残り7例には有意な病変は確認されなかった。
- “腹水症”例と“心不全症”例では共通する肝臓および心臓組織病変を有すること から (表1) ,両病型は関連する病態であり,特に肝臓組織病変がこれらの基礎病変として注目された。
成果の活用面・留意点
従来ブロイラー鶏の腹水症では心臓肺機能不全による全身循環障害によると推定されてき た。しかし,今回の成績から肝機能障害についても循環障害と共に腹水症の病理発生に重要な 役割を演じていることが示唆された。このことは今後の予防対策を検討する上での有効な指針 になる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ブロイラー鶏の腹水症の病理発生の解明
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成10-12年度
- 発表論文等:1)第125回日本獣医学会講演要旨 p177(1998)
2)Avian Dis., 43:526-532(1999)
3)鶏病研究会報,35:61-67(1999)