離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の病態と病変の関連
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要約
PMWS発症豚においては末梢血中のリンパ球数は低下しており,リンパ球数の低下とリンパ組織病変の程度は関連することが示された。
- 担当:家畜衛生試験場 総合診断研究部 環境衛生研究室 (現 動物衛生研究所 疫学研究部 環境衛生研究室)
- 連絡先:0176(62)5115
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:豚
- 分類:研究
背景・ねらい
離乳後多臓器性発育不良症候群(postweaning multisystemic wasting syndrome:PMWS)には,新型のブタサーコウイルスII型(PCV2)が関与すると考えられているが発生原因には不明な点が多い。また,その病理発生や病態もほとんど明らかにされていない。PMWSの特徴病変としてリンパ組織病変があり, 発症豚の免疫能低下が推測されている。そこで,血液検査,リ ンパ球サブセットの測定および病理組織学的検査を行って,PMWSの病態を解析した。
成果の内容・特徴
- PMWS発生農場における60~90日齢の発育不良豚と正常発育豚およびPMWS非発生農場の正常発育豚の末梢血を比較したところ,PMWS発生農場の発育不良豚のリンパ球数は,いずれの正常発育豚よりも低値を示した。加えて,PMWS発生農場の正常発育豚のリンパ球数は,非発生農場の正常発育豚に比べ低値を示した (図1) 。また,CD2+,CD4+,CD8+およびB細胞の各リンパ球サブセット値は,いずれもリンパ球数と同様の傾向を示した (表1) 。一部の発育不良豚においてGOT,LDH,総ビリルビン,BUNおよびクレアチニンが高値を示した。
- PMWS発生農場の発育不良豚を一定期間観察したところ,死亡または瀕死する豚と耐過する豚とに分かれ,死亡・瀕死豚ではリンパ球数の減少が継続したが,耐過豚ではリンパ球数が増加した (図2) 。死亡・瀕死豚では,PCV2抗原を多量に含むPMWSに特徴的なリンパ組織病変(濾胞リンパ球の減少,細胞質内封入体形成および巨細胞浸潤) (図3) ならびに重篤な肺炎が共通して認められた。一方,耐過豚のリンパ組織では,PCV2抗原は少な く,リンパ組織病変ならびに肺炎病変は軽度であった。末梢血ならびにリンパ組織の上記リンパ球サブセット値は,死亡・瀕死豚が耐過豚に比べ,いずれも低値を示した。また,これらの発育不良豚すべてにおいて,リンパ組織から,PCR法によりPCV2DNAが検出され,また,血清中PCV2抗体価は高値を示した。
以上の成績から,PMWS発症豚においては末梢血中のリンパ球数は低下しており,リンパ球数の低下とリンパ組織病変の程度は関連することが示された。
成果の活用面・留意点
PMWS発症豚の全身性の免疫能低下が惹起されている可能性が明らかにされた。今後,リンパ組織におけるリンパ球減少の発生メカニズムを解明していく必要がある。
具体的データ




その他
- 研究課題名:離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の実態解明
- 予算区分:経常(場内プロ)
- 研究期間:平成12年度(平成12年~平成13年)
- 発表論文等:第130回日本獣医学会講演要旨集,p.112(2000)