志賀毒素に起因する豚初代血管内皮培養細胞のアポトーシス
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要約
豚初代血管内皮培養細胞に志賀毒素を暴露するとアポトーシスが起こり,これを指標とする毒性評価に応用が可能であることが示唆された。この系はヒトや豚での血管障害機序と破壊を通じた血行性播種解析のモデルにもなる。
- 担当:家畜衛生試験場 飼料安全性研究部 毒性病理研究室 (現 動物衛生研究所 安全性研究部 毒性病理研究室)
- 連絡先:0298(38)7818
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:豚
- 分類:研究
背景・ねらい
培養細胞をもちいた志賀毒素の毒性評価法については,多くの細胞をもちいて種々の検討が 試みられているが,動物試験より高感度かつ的確な手法は確立されていない。そこで,毒素の有効な評価手法の開発を目的に,毒性発現の指標となる細胞形態変化について豚初代血管内皮細胞をもちいて検討した。
成果の内容・特徴
- 豚の動脈弓から分離した血管内皮細胞は9代目までの継代が可能であった。培養細胞は, 内皮に特徴的な敷石状配列をとり,電顕で細胞質内に Weibel-Palade 小体が観察され,形態的に血管内皮と同定された (図1) 。
- 豚初代動脈内皮培養細胞に志賀毒素 (VT2e:豚由来 E. coli O139株の培養上清)を暴露し,光顕・電顕観察およびTUNEL染色をおこなった。その結果,細胞核クロマチ ンの凝縮,断片化やアポトーシス小体の形成などの形態変化がみられ,これらの細胞はTUNEL 染色陽性を示した (図2) 。このことから VT2e は豚初代血管内皮培養細胞にアポトーシスを起こすことが示された。
成果の活用面・留意点
豚血管内皮の培養細胞系は形態的変化(アポトーシス)を指標とした志賀毒素 VT2 の毒性評価に応用可能と考えられる。さらに,この系はVT2による血管障害が指摘されている豚の浮腫病やヒトの溶血性尿毒素症候群 (HUS) 解析のモデルとなることが期待される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:豚の培養血管内皮細胞を用いた有害物質の毒性評価法の確立
- 予算区分:経常
- 研究期間:平成11年度(平成10~11)
- 発表論文等:第16回ヨーロッパ獣医病理学会(16th Meeting of the European Society of Veterinary Pathology, Abstract 124, 1998)