ウシ肝細胞のハプトグロビン産生に対するウシインターロイキン6の作用
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要約
ウシ初代培養肝細胞でのハプトグロビン産生誘導活性は炎症性サイトカインの一つであるIL-6が最も強く,この活性は他の炎症性サイトカインとの相互作用により制御されている。
- 担当:家畜衛生試験場 飼料安全性研究部 がん原性研究室 (現 動物衛生研究所 安全性研究部 安全評価研究室)
- 連絡先:0298(38)7823
- 部会名:家畜衛生
- 専門:診断予防
- 対象:乳用牛・肉用牛
- 分類:研究
背景・ねらい
家畜の様々な疾病を防除するために,組換えサイトカインの利用が期待されている。肝臓でのハプトグロビンをはじめとする急性期蛋白産生は,感染や炎症等による組織の侵襲から宿主を守るための生体防御反応の一つである。組換えサイトカインを応用した肝臓での急性期蛋白合成の制御技術により,宿主の非特異的生体防御反応を高め,疾病等による損耗を最小限に抑えることが可能になる。この研究では, ウシインターロイキン6 (IL-6)をバキュロウイルス発現系を用いて作製し,ウシ肝細胞でのハプトグロビン合成に及ぼす影響について解析した。
成果の内容・特徴
- バキュロウイルスを用いて,組換えウシIL-6を産生した。組換えバキュロウイルスに感染 した昆虫細胞は,抗ヒツジIL-6抗体に反応する分子量約23.8 kDaのタンパク質,すわなちIL-6 を分泌した (図1)。
- この組換えウシIL-6は,ウシ初代培養肝細胞のアルブミン産生を濃度依存性に低下させた。IL-6と同様に,他のウシ組換え炎症性サイトカインである腫瘍壊死因子(TNF-α),インターロイキン1β(IL-1β)およびインターフェ ロンγ(IFN-γ)もアルブミンの産生を濃度依存性に低下させた (図2)。
- 一方,組換えウシIL-6はウシ初代培養肝細胞のハプトグロビン産生を濃度依存性に増加させた。TNF-αおよびIL-1βもハプトグロビンの産生を増加させたが,その程度はIL-6よりも低く,IFN-γによる産生はみられなかった (図3) 。したがって,ウシ肝細胞でのハプトグロビンの誘導にはIL-6が重要であることが確認された 。
- 炎症性サイトカイン同士の相加・相乗作用について検討したところ,IL-6によるウシ肝細胞でのハプトグロビン産生に対して,TNF-αはさらにその産生を増強させ,逆にIFN-γは抑制した。IL-1βは単独でウシ肝細胞でのハプトグロビンの産生を増加させるが,IL-6との相加・相 乗作用は認められなかった (図4)。
成果の活用面・留意点
ウシ組換えIL-6と他の炎症性サイトカインの相互作用を明らかにしたことにより,ウシの疾病の早期治療への有用性が示唆される。また,作製したウシ組換えIL-6は,ウシの免疫機構の増強技術や炎症抑制に活用できる。
具体的データ




その他
- 研究課題名:サイトカインの肝臓機能への影響
- 予算区分:畜産対応研究(サイトカイン)
- 研究期間:平成12年度(平成9年~14年度)
- 発表論文等:
1)Biological functions of recombinant bovine interleukin 6 expressed in a baculovirus system. CYTOKINE, 11:863-868 (1999)
2)第129回日本獣医学会講演要旨集, P. 93 (2000)
3)第130回日本獣医学会講演要旨集, P. 204 (2000)