さとうきび抽出物(SCE)のニワトリにおけるEimeria tenellaオーシスト感染の防御効果
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要約
1週齢ニワトリのそ嚢内にポリフェノールを含有するさとうきび抽出物(500 mg/kg)を3日間投与後,Eimeria tenella オーシスト(NIAH株; 2x103個)を経口接種すると
,その後の同原虫(1x105個)の攻撃感染による発症の抑制が認められたことから,本物質がコクシジウム症の予防に有用であることが判明した。
- キーワード:ニワトリ,さとうきび抽出物,ポリフェノール,コクシジウム症,感染予防
- 担当:動衛研・生産病研究部・上席研究官室,病態病理研究室,疫学研究部・予防疫学研究室
- 連絡先:0298-38-7780
- 区分:動物衛生
- 分類:技術・参考
背景・ねらい
有用資源の再利用による循環型及び環境保全型社会の構築が強く求められている昨今,「食」の安全性と環境汚染を考慮に入れた21世紀型の新たな家畜生産技術の開発という観点から
,我々は世界に先駆けてさとうきびから砂糖を精製する工程で生じる大量のバガスや搾り汁の不純物等の廃材に免疫賦活作用や成長促進作用を有する成分(ポリフェノール分画)を抽出することに成功している。そこで
,ニワトリの原虫(Eimeria tenella)感染症の1つであるコクシジウム症の発症に及ぼすさとうきび抽出物(SCE)の影響を免疫学的及び組織病学的に検索することにより
,本物質の有用性を評価した。
成果の内容・特徴
- 研究に供したSCEは,バガスや搾り汁を陽イオンクロマトグラフィーにて非蔗糖分画を回収し,凍結乾燥した粉末である。SCEにはポリフェノール5%,糖質8.2%,ミネラル(Na,K,Ca等)や有機酸が含まれている。
- SCEの免疫賦活作用は以下のように評価した。1週齡ニワトリ(H.B15)のそ嚢内にSCE (500 mg/kg)を3日間投与し,2および3週齢時に羊赤血球(SRBC; 5x108 cells)とBrucella abortus (BA; 1x109 cells)の混合液0.1 mlを静脈内に接種した。各免疫後7日にSRBCおよびBAに対する凝集力価を測定したところ
,SCE投与群における両抗原に対する抗体価はいずれも対照群に比して有意に高かった。
- SCEのEimeria tenellaオーシスト感染に対する防御効果は以下のように評価した。SCEの最終投与後,Eimeria tenellaオーシスト(NIAH株; 2x103個)を経口接種により感作し
,4週齢時に同オーシスト1x105個を接種した。その攻撃感染後,体重測定,糞便検査,糞中のオーシスト数の算定
,腸管の肉眼的検査,組織病理学的及び免疫学的検査等を行った。その結果,SCE投与群においては血便が一過性に排泄されたものの,排泄オーシスト数も対照群に比して少なく
,また1日当りの体重増加も対照群に比べて有意に高かった(表1)。また,腸管の肉眼的検査においてはSCE投与群の病変のスコアーは有意に低く
,盲腸の組織病理学的検査においても,原虫はほとんど検出されなかった(図1)。
成果の活用面・留意点
- SCEおよびEimeria tenellaを実験的にそ嚢内に投与したヒナにおいて,Eimeria tenellaオーシストの攻撃感染に対するの防御効果がみられたことから
,SCEがコクシジム症の予防に有効であることが示唆されたが,野外への応用,実用化を試みるためには今後,投与条件,方法や消化管粘膜における作用機構等に関するより詳細な研究を実施する必要がある。また
,SCEにはSRBCやBAに対する抗体産生増強作用が認められたことから,今後,ニワトリ用ワクチンに対すアジュバントとしての利用法についても検討する予定である。
具体的データ
その他
- 研究課題名:有用免疫修飾物質の探索とその作用機構に関する研究
- 予算区分:交付金,重点強化費「免疫抑制の軽減」
- 研究期間:1998~2001年度
- 研究担当者:廣田好和,志村亀夫,中村菊保,Moshira El Abasy,本部真樹
- 発表論文等:
1)Abasy et al. (2001) 第131回日本獣医学会学術集会講演要旨集 p94.
2)Abasy et al. (2001) 第132回日本獣医学会学術集会講演要旨集 p195.
3)廣田ら 特許出願中(特願2001-257301)「コクシジウムによって引き起こされるヒトまたは動物の病気に対する予防治療剤及びコクシジウムの軽感染に対するヒトまたは動物の免疫のためのアジュバント剤」