豚丹毒・豚マイコプラズマ肺炎に対する組換え多価ワクチンの開発
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要約
豚丹毒菌YS-1株の菌体表面にMycoplasma hyopneumoniae P97アドヘジン抗原の一部を発現するYS-19株を作製し,この株の豚丹毒および豚マイコプラズマ肺炎の両疾病に対するワクチン効果を確認した。
- キーワード:豚丹毒,豚マイコプラズマ肺炎,組換え多価ワクチン
- 担当:動衛研・免疫研究部・免疫制御研究室
- 連絡先:0298-38-7790
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
養豚現場において多価ワクチンの使用は省力化に大きく貢献することができるが,ワクチンベクターを利用した多価ワクチンはこれまで実用化に至っておらず,その開発が望まれてきた。そこで
,これまでに我々が開発した豚丹毒菌弱毒化YS-1株を生ワクチンベクターとして,豚丹毒および豚マイコプラズマ肺炎に対する多価ワクチンの開発を行った。
成果の内容・特徴
- 豚丹毒菌弱毒化YS-1株をワクチンベクターとして使用するため,この菌における外来抗原の発現系の確立を行った。YS-1株の菌体表面に発現するSpaA.1抗原を運搬体として利用し
,菌体表面に M. hyopneumoniae のP97アドヘジン抗原の一部を発現するYS-19株の作製に成功した
(図1)。
- 生後7日齢のSPF豚9頭を用いてYS-19株の豚丹毒に対するワクチン効果を見た。その結果,YS-19株を2回経鼻免疫された豚は豚丹毒菌強毒株の攻撃による発症が全く認められず
,この株の豚丹毒に対するワクチン効果が証明された
(表1)。
- 生後7週齢のSPF豚20頭を用いてYS-19株の豚マイコプラズマ肺炎に対するワクチン効果を見た。その結果,YS-19株の2回の経鼻免疫によりM. hyopneumoniae 強毒株の接種による肺炎病変の形成が著しく抑制されることが判明した
(表2)。このことから
,YS-19株の豚マイコプラズマ肺炎に対するワクチン効果が証明された。
成果の活用面・留意点
- YS-19株の豚丹毒および豚マイコプラズマ肺炎に対する多価ワクチンとしての実用化への可能性が示された。今後,免疫量や免疫回数の決定など,製品化に必要な基礎的データを得る必要がある。
具体的データ
その他
- 研究課題名:遺伝子工学手法を用いた豚病多価ワクチンの開発
- 予算区分:連携実用化
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:下地善弘,森 康行,宗田吉広
- 発表論文等:
1)Shimoji et al. (2002) Infect. Immun. 70:226-232.
2)下地ら 特許出願中 (特願2000-313694) 「マイコプラズマ・ハイオニューモニエ抗原を発現する豚丹毒菌および該菌による免疫化方法」