口蹄疫ウイルスO/JPN/2000の全塩基配列
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要約
口蹄疫ウイルス日本分離株(O/JPN/2000)の全塩基配列(8175塩基)を決定した。これにより,本株の遺伝学的性状が明らかとなった。
- キーワード:口蹄疫ウイルス,日本分離株,全塩基配列
- 担当:動衛研・海外病研究部・診断研究室
- 連絡先:042-321-1441
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
2000年3月,我が国で92年ぶりに口蹄疫が発生した。分離したO/JPN/2000株の構造蛋白VP1の遺伝子解析により,本株は近年世界的に流行しているPanAsia strainに属することが判明した。さらに
,詳細な本株の遺伝学的性状を明らかにするため,ウイルスゲノムの全塩基配列を決定し,本株の分子疫学,遺伝子診断法の高度化,感受性動物に対する病原性の解析等に必要な基礎的知見を得る。
成果の内容・特徴
- 口蹄疫ウイルス日本分離株(O/JPN/2000)の全塩基配列をPCR産物のダイレクトシークエンシングおよびプライマーウォーキングにより決定した(図1)。
- FMDVゲノムの5'末非翻訳領域には数百塩基のpoly(C)配列が存在し,その5'末側はS-fragment,3'末側はL-fragmentと呼ばれる。日本分離株のゲノムRNAは
,S-fragmentは367塩基,L-fragmentは3'末端のpoly(A)配列を除いた7808塩基からなっていた。
- L-fragment中には6996塩基からなるORFが存在し,構造及び非構造蛋白をコードするL,1A,1B,1C,1D,2A,2B,2C,3A,3B,3C,3Dと推測される領域から構成されていた。
- タイプOの代表株であるO1/Kaufberurn/FRG/66との比較から,本株の遺伝子がコードする各構造・非構造蛋白には,特異的な欠失あるいは挿入は認められなかった(表1)。
成果の活用面・留意点
- 口蹄疫ウイルス日本分離株の遺伝学的性状が明らかとなった。
- 本株が保持する非定型的な病原性は,ゲノム中の特異的な欠失あるいは挿入によるものではないことが推測された。
- 本株がもつ感受性動物に対する病原性状の多様性に関連する病原体側の要因の解析が可能となった。
具体的データ
その他
- 研究課題名:口蹄疫ウイルスO/JPN/2000の全塩基配列の決定
- 予算区分:交付金プロ(口蹄疫)
- 研究期間:2001~2003年度
- 研究担当者:菅野 徹,山川 睦,坂本研一
- 発表論文等:1)Kanno et al. (2002) Virus Genes 25:119-125.
2)DNAデータベースに登録済 (No. AB079061,AB079062)