家畜中毒診断のためのオレアンドリン,グラヤノトキシンおよび可溶性シュウ酸の分析法
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要約
薄層クロマトグラフ法および高速液体クロマトグラフ法による胃内容中および血液中オレアンドリン,薄層クロマトグラフ法による胃内容中グラヤノトキシンおよびキャピラリー電気泳動法による植物中可溶性シュウ酸の測定法をそれぞれ確立した.
- キーワード:有毒植物,中毒,オレアンドリン,グラヤノトキシン,シュウ酸,機器分析
- 担当:動衛研・安全性研究部・毒性物質制御研究室
- 連絡先:0298-38-7821
- 区分:動物衛生
- 分類:行政・普及
背景・ねらい
有毒植物による家畜の中毒の確定診断法を確立し,家畜中毒診断マニュアルを作成する一環として,キョウチクトウの有毒物質であるオレアンドリン,
ハナヒリノキやアセビなどに含まれるグラヤノトキシン,カタバミなどの雑草や暖地型牧草に多く含まれる可溶性シュウ酸の分析法を検討した.
成果の内容・特徴
- 胃内容中オレアンドリンの薄層クロマトグラフィー(TLC)あるいは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析:これまでのTLCによる
分析法では,毒性の高い試薬による煩雑な試料の前処理が必要であった.そこで,Sep-Pakカートリッジによる固相抽出を応用した,簡便な試料の前処理
法を確立した.さらに,HPLCによるオレアンドリン検出法も検討した.TLCおよびHPLCによる検出限界はそれぞれ0.1あるいは0.02μg/g胃
内容である.
試料調製:胃内容1gにメタノールを20
ml添加し2時間攪拌して抽出する.これに水30mlを添加・攪拌したのち遠心し上清を回収する.上清30
mlを,あらかじめメタノールおよびメタノール - 水(4:6,v/v)で洗浄したSep-Pak Plus
C18カートリッジに添加する.メタノール - 水(1:1)で洗浄後,12mlのメタノール -
水(6:4)で溶出する.溶出液を減圧乾固し,メタノールあるいはHPLC移動相に溶解する.
分析条件:TLCは既報(J.Anal.Toxicol. 11:219-221 (1987))に準じて実施する.HPLCは,分析カラム STR ODS-II(150x4mm),移動相 メタノール - 水(57:43),流速 1ml/分,検出 UV220nmで実施する.典型的薄層クロマトグラムを
図1に示す.
- 血液中オレアンドリンのHPLCポストカラムラベル法による分析:血液中のオレアンドリンを検出できる高感度分析法がなかった.そこで,強心配糖
体と強酸により蛍光物質が生じる反応をHPLCポストカラムラベル法に応用し,高感度で特異性の高い分析法を開発した.本法による検出限界は1ng/ml
血漿である.
試料調製:血漿0.5mlをあらかじめメタノールおよび水で洗浄したSep-Pak Light
tC2カートリッジに添加する.水およびアセトニトリル-水(2:8)で順次洗浄後,2mlのアセトニトリル-水(4:6)で溶出し,溶出液を減圧乾固
後,50μlのメタノールに溶解する.
分析条件: HPLCは,分析カラム STR ODS-II(150x4mm),移動相 アセトニトリル -
0.2%デヒドロアスコルビン酸(6:4),流速 0.4ml/分で実施する.ポストカラムラベルには,濃塩酸を流速
0.4ml/分で送液し,混合液を70℃に加温した内径0.25mm,長さ20mのテフロンチューブに導入して反応させる.生成した蛍光物質
は,348nmでの励起による465nmでの蛍光で検出する.典型的クロマトグラムを
図2に示す.
- 胃内容中グラヤノトキシンのTLCによる分析:これまでのTLC分析法では,試料調製に毒性の高いクロロホルムによる液液分配を繰り返す必要が
あった.そこで,Sep-Pakカートリッジによる固相抽出を応用した,簡便な試料の前処理法を確立した.本法による検出限界は0.2μg/g胃内容であ
る.
試料調製:胃内容5gにメタノールを50ml添加し30分間攪拌して抽出する.ろ紙でろ過後遠心し,上清40mlを回収して減圧乾固する.乾固
物を10mlのメタノール - 水(1:9)に再溶解し,あらかじめメタノールおよびメタノール - 水(1:9)で洗浄したSep-Pak Plus
C18カートリッジに添加する.メタノール -水(1:9)で洗浄後,5mlのメタノール -
水(1:1)で溶出し,溶出液を減圧乾固後,メタノールに溶解する.
分析条件:TLCは既報(J.Appl.Toxicol. 6:121-122 (1986))に準じて実施する.典型的クロマトグラムを
図3に示す.
- 植物中可溶性シュウ酸のキャピラリー電気泳動法(CE)による分析:これまで,植物中の可溶性シュウ酸を簡便に検出する方法がなかった.そこ
で,CEを用いた簡便定量法を確立した.シュウ酸の検出限界は0.1%以下である.なお,本法では,植物中の硝酸態窒素濃度も同時に定量できる
(図4).
試料調製:乾燥後粉砕した植物に100倍量の純水を加え,穏やかに攪拌しながら30分間抽出する.遠心後の上清を0.45μmのメンブランフィルターでろ過し分析に供する.
分析条件:CEは,キャピラリー フューズドシリカ(75μm x 50cm),泳動バッファー 30mM 硫酸ナトリウム,5%
CIA-Pak OFM Anion-BT,泳動電圧 8kV,検出 UV 214nm
で実施する.暖地型牧草セタリア抽出物のエレクトロフェログラムを
図4に示す.
成果の活用面・留意点
- 本成果は,家畜保健衛生所,動物衛生研究所などの検査機関あるいは研究機関による家畜中毒診断に活用できる.
具体的データ
その他
- 研究課題名:植物由来有毒物質の分析法の確立
- 予算区分:
交付金
- 研究期間:
1999-2001年度
- 研究担当者:
宮崎 茂,山中典子,グルゲ キールティー シリ
- 発表論文島:
1)Hamada et al. (2002) J. Chromatogr. Sci. 40:515-518.
2)濱田ら (2001) 第132回日本獣医学会学術集会講演要旨集 P212.
3)宮崎ら (2001) 第132回日本獣医学会学術集会講演要旨集 P212.