カイコを宿主とした豚インターロイキン18蛋白質の大量生産系の確立
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
豚のインターロイキン18(IL-18)遺伝子とその変換酵素Caspase-1遺伝子をクローニングし、前駆体型IL-18およびCaspase-1を発現できる組み換えバキュロウィルスをそれぞれ作製した。昆虫細胞における前駆体型IL-18とCaspase-1の共発現により、豚の活性型IL-18の分泌発現が可能となった。宿主としてカイコを用いることにより、カイコ体液中に豚の前駆体型および活性型IL-18蛋白質をそれぞれ大量に生産する系が確立できた。
- キーワード:豚、インターロイキン18、変換酵素、カイコ、バキュロウィルス
- 担当:動衛研・免疫研究部・免疫機構研究室
- 連絡先:電話029-838-7857
- 区分:動物衛生
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
インターロイキン18(IL-18)は、T細胞やNK細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)を誘導するサイトカインとして見いだされた。近年では自然免疫と獲得免疫の両者に関与するサイトカインとして注目されている。
我々は、家畜での本サイトカインの利用を目的として、豚のIL-18遺伝子とIL-18の前駆体型から活性型への変換に必須の酵素である豚のCaspase-1遺伝子をクローニングした。さらに、豚の前駆体型IL-18およびCaspase-1を発現する組み換えバキュロウィルスを作製した。それらを共発現させることにより、宿主である昆虫細胞およびカイコ個体での豚IL-18蛋白質の大量生産系を確立した。
成果の内容・特徴
- 豚のIL-18およびその変換酵素Caspase-1遺伝子をクローニングし、豚の前駆体型IL-18およびCaspase-1を発現する組み換えバキュロウィルスをそれぞれ作製した。
- この2種類の組み換えバキュロウィルスを、昆虫細胞Tn5に共感染させることにより、昆虫細胞培養上清中に豚の活性型IL-18を分泌発現させた。
- 昆虫細胞およびカイコの両者に感染できる、ハイブリッドバキュロウィルスを利用して、豚の前駆体型IL-18およびCaspase-1を発現する組み換えハイブリッドバキュロウィルスをそれぞれ作製した。
- 作製した組み換えハイブリッドバキュロウィルスをカイコ5齢幼虫に感染させることにより、カイコ体液中に豚の前駆体型IL-18および活性型IL-18をそれぞれ大量に発現させる系を開発した(図1)。
- 発現させた豚IL-18の生物活性を豚末梢血単核球におけるIFN-γ誘導能を指標に評価した。前駆体型IL-18にはIFN-γ誘導活性は認められないが、活性型IL-18には強力なIFN-γ誘導能が認められた(図2)。
成果の活用面・留意点
IFN-γ誘導因子として重要なサイトカインと考えられる豚IL-18の大量生産系を開発した。豚IL-18のin vitroでの様々な免疫学的解析が可能になるとともに、豚への投与によるワクチンアジュバントや免疫増強剤としての効果の検討が可能となった。
具体的データ


その他
- 研究課題名:昆虫細胞並びに昆虫を用いた豚インターロイキンー18生産系の確立
- 予算区分:交付金プロ(動植物工場)
- 研究期間:1999~2004年度
- 研究担当者:宗田吉広、犬丸茂樹、森 康行
- 発表論文等:1)Muneta Y et al. (1999) J. Interferon Cytokine Res. 19:12289-1296.
2)Muneta Y et al. (2000) Cytokine 12:566-572.
3)Muneta Y et al. (2001) J. Interferon Cytokine Res. 21:125-130.
4)Muneta Y et al. (2003) J. Vet. Med. Sci. 65:219-223
5)宗田吉広ら 特許公開2001-169785号 「ブタのカスパーゼファミリーの構造遺伝子」