高生物活性を有する組換え馬インタ-フェロンγの作製

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要約

バキュロウイルス発現系を使用して組換え馬インタ-フェロンγ(reIFN-γ)を作製した。reIFN-γはMHC-II発現作用や抗ウイルス作用などの生物活性を有し、特にRNAウイルスに対し高い抗ウイルス活性を示した。

  • キーワード:バキュロウイルス、馬、インタ-フェロン、ウイルス、抗ウイルス活性
  • 担当:動衛研・感染病研究部・ウイルス病研究室
  • 連絡先:電話029-838-7841
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

インターフェロン(IFN)は動物種特異性があるため、家畜において臨床上実用化するためには、その動物種由来の製品を量産する必要がある。遺伝子組換え技術を用いた馬IFNの発現系を開発し、その大量培養を行い、作製された組換え馬IFNの生物活性、特に抗ウイルス活性を測定し、馬の急性呼吸器感染症に対する治療法としてIFNの活用を検討した。

成果の内容・特徴

  • Concanavalin Aで刺激した培養馬リンパ球からmRNAを取り出し、RT-PCRによりIFN-γのcDNAを増幅し、プラスミドに組込んだ。
  • 馬IFN-γのcDNAをバキュロウイルスに組込み、TN5細胞培養上清およびカイコ5齢幼虫体液中で発現させた(図1、2)。
  • 作製した2種類の組換えウイルスは、一方(AcEIFN-γ)は分子量14、16、18kDaの蛋白質として、他方(HyEIEN-γ)は分子量16、18、20kDaの蛋白質として、馬IFN-γを発現した。それらはツニカマイシン処理でそれぞれ分子量14kDa、16kDaとなり(図2)、生物活性が低下することより、糖鎖が付加されており、それが生物活性に重要な働きをしていることが示唆された。
  • 作製した組換え馬IFNγは、vesicular stomatitis virus(VSV)を使用したプラック減少法で105u/ml以上の抗ウイルス作用を有していた。また、馬由来培養細胞にMHC-II抗原を発現させた。
  • 馬由来のウイルスに対するreIFN-γの抗ウイルス作用を調べた。培養液中にreIFN-γを100u/mlの濃度で加え、細胞変性効果を指標としてウイルスの増殖性を測定した。抗ウイルス作用が認められた。特にRNAウイルスに対し抗ウイルス作用は著しかった。
  • 1000TCID50/0.1mlのウイルスを、100u/mlのreIFN-γで感作した細胞とControl(無処理)細胞に接種し、Control細胞の50%に細胞変性効果が生じた時点でそれぞれの培養液中のウイルス感染価を測定した結果、表1に示すとおり、すべての検査ウイルスに対し抗ウイルス作用が認められた。

成果の活用面・留意点

  • 作製したreIFN-γは、昆虫由来の浮遊細胞やカイコ幼虫を使用し大量生産が可能である。
  • 馬に呼吸器性疾病を起こす各種ウイルス(馬ピコルナウイルス、馬ライノウイルス、馬動脈炎ウイルス、馬ヘルペスウイルスなど)に抗ウイルス作用を示すことより、馬の急性呼吸器感染症に対する治療薬として期待される。

具体的データ

表1 組換え馬IFN-γ の抗ウイルス作用

 

図1 昆虫細胞に蓄積されるreIFNγ

図2 Western blot によるreIFNγの解析

その他

  • 研究課題名:発現馬インタ-フェロンのウイルス増殖抑制効果に関する基礎研究
  • 予算区分:交付金(共同研究)
  • 研究期間:2000~2002年度
  • 研究担当者:呉東来、泉對博、村上賢二、猪島康雄、横山隆、坪井孝益、小西美佐子
  • 発表論文等:1)Wu et al. (2002) Cytokine 20:63-69.