豚リンパ組織におけるサイトカイン遺伝子の発現
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要約
豚のリンパ組織におけるIL-1β、IL-6、IL-10、IL-12p35、IL-12p40、IL-18、IFN-γおよびTNF-αmRNAをRT-PCRで検出する方法を確立し、それらの発現状態を成豚と子豚で比較した。子豚では成豚に比べ、細胞性免疫にかかわるサイトカインmRNAの発現が弱い傾向がみられた。また、オリゴプローブを用いたin situ hybridization (ISH) で、豚IL-18 mRNAの検出が可能となった。
- キーワード:豚、リンパ組織、サイトカイン、RT-PCR、in situ hybridization
- 担当:動衛研・安全性研究部・毒性病理研究室
- 連絡先:電話029-838-7818
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
サイトカインは恒常性維持や生体防御等の免疫反応をコントロールしている。病態解析や免疫反応にかかわるサイトカインの動態を明らかにするためには、生体局所におけるサイトカイン遺伝子発現の検出技術が必要である。本研究では豚サイトカインmRNA発現の検出法を確立し、豚のリンパ組織について組織・細胞レベルでのサイトカイン遺伝子発現の特性を明らかにした。
成果の内容・特徴
- RT-PCRの条件検討を行い、豚の脾臓、胸腺、扁桃、膝窩リンパ節および腸間膜リンパ節におけるIL-1β、IL-6、IL-10、IL-12p35、IL-12p40、IL-18、IFN-γおよびTNF-αの半定量的な検出法を確立した。
- 成豚(6~12カ月齢)および子豚(1カ月齢および1日齢)各4頭で、発育にともなうリンパ組織におけるサイトカインmRNA発現を比較した。1日齢および1カ月齢では、成豚に比べIL-1βのmRNA発現が強く、IL-6の発現は1日齢と1カ月齢の扁桃で成豚よりも強かった。このことは、外界由来の異物に対する反応を反映したものであると考えられた。また、1日齢では成豚に比べ、脾臓、膝窩および腸間膜リンパ節でIL-10 mRNA発現が強く、逆にIFN-γ mRNA発現は弱い傾向がみられた。(図1)
- 豚IL-18のオリゴプローブを設計・合成し条件検討を行った結果、ISHによるIL-18のmRNA検出が個々の細胞レベルで可能となった。上記のリンパ組織では、シグナル陽性細胞はおもにリンパ濾胞の周囲に散在性に認められ、形態学的にマクロファージ系の細胞と思われた。(図2)
成果の活用面・留意点
- 本研究により、組織レベルでの豚サイトカイン遺伝子発現の検出が可能となった。各種疾患の病態解析に有用である。
- 幼若豚においては成豚に比べ、細胞性免疫にかかわるサイトカインmRNAの発現が弱い傾向がみられた。
- ISHによるIL-18 mRNA検出法により、豚の病理組織学的な変化とIL-18遺伝子発現の関わりを詳細に解析することが可能となった。
具体的データ


その他
- 研究課題名:豚の病態診断へのサイトカイン遺伝子発現測定技術の開発
- 予算区分:交付金プロ(サイトカイン)
- 研究期間:2000~2002年度
- 研究担当者:三上 修、中島靖之
- 発表論文等:Mikami et al. (2002) Vet. Immunol. Immunopathol. 90: 205-209.