豚および牛インターロイキン-21の遺伝子クローニングと免疫増強活性を有する組換え蛋白質の作製
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要約
豚および牛のインターロイキン-21(IL-21)遺伝子を単離し、塩基配列を決定した。また、大腸菌およびバキュロウィルス発現系を利用して、豚および牛IL-21の組換え蛋白質を作製し、NK細胞に対する増殖活性および細胞傷害活性の増強作用を有することを示した。
- キーワード:IL-21、NK細胞、自然免疫、細胞傷害活性
- 担当:動物衛生研・免疫研究部・免疫機構研究室
- 連絡先:電話029-838-7857、電子メールでの問い合わせはこちらから。
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
近年、食の安全や人獣共通感染症に対する関心が非常に高まっており、健康な家畜から安全な畜産物を生産、供給することの重要性が叫ばれている。また、医療あるいは獣医療現場における抗生物質の乱用が原因と考えられる耐性菌の出現が問題となり、畜産業における抗生物質の使用は縮小傾向にある。このような背景から、抗生物質に依存せず、動物が本来備えている免疫機能の活性化や制御を通して、感染症を防除する新しい診断・予防・治療技術の開発が要望されており、その1つの柱がサイトカインである。中でもインターロイキン-21(IL-21)はNK細胞の増殖や機能に関与し、自然免疫機能を制御するサイトカインとして注目される。そこで本研究では、家畜における本サイトカインの利用を目指して、豚および牛IL-21に関する以下の研究を行った。
成果の内容・特徴
- 豚および牛IL-21の遺伝子を初めてクローニングし、塩基配列を決定した。
- 大腸菌発現系およびバキュロウィルス発現系を用いて、上記2つの組換え蛋白質を作製した。
- 組換え豚IL-21はNK細胞に対する増殖活性(図1)およびインターフェロンγ(IFN-g)産生誘導活性を有していた。
- 組換え牛IL-21はT細胞およびNK細胞に対する増殖活性および牛末梢血単核球の細胞傷害活性の増強作用(図2)を示した。
成果の活用面・留意点
- IL-21は主としてNK細胞に作用するサイトカインであり、上記の遺伝子や組換え蛋白質は、豚および牛の自然免疫機能の解明や制御技術の開発に貢献するとともに、豚および牛のNK細胞活性の増強を介して、感染症やストレスに対する抵抗性を高めることが期待される。
具体的データ


その他
- 研究課題名:ブタIL-18およびウシIL-21に関する研究
- 課題ID:13-04-03-*-14-04
- 予算区分:交付金/共同研究
- 研究期間:2003~2004年度
- 研究担当者:宗田吉広、長屋英和(片倉工業株式会社)、皆川 遊、永田礼子、森 康行
- 発表論文等:1) Muneta et al. (2003) Vet. Immunol. Immunopathol. 95:73-80.
2) Muneta et al. (2004) J. Vet. Med. Sci. 66(3):269-275.
3) Muneta et al. (2004) Biotechnol. Lett. 26(18):1453-1458.
4) Genbank Accession Number : AB073020 (Porcine IL-21), AB073021(Bovine IL-21)