ブタインターロイキン(IL)-12受容体の構造解明とその発現調節を担う新規プロモーター領域の同定

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要約

ブタIL-12受容体β2サブユニットの相補DNAおよびゲノムDNAを単離し、当該遺伝子の発現が5'側上流に存在するAP1結合配列を含むブタ固有のプロモーターによって制御されていることを明らかにした。

  • キーワード:ブタ、インターロイキン-12、インターロイキン-12受容体
  • 担当:動物衛生研・免疫研究部・応用免疫研究室
  • 連絡先:電話029-838-7870、電子メールでの問い合わせはこちらから。
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

インターロイキン(IL)-12はT細胞やNK細胞の増殖、活性化を制御する主要なサイトカインである。IL-12が作用するためにはその特異的受容体(IL-12R)への結合することが必要であるが、その発現調節機構には不明な点が多い。特に豚におけるIL-12Rの発現様式は人やマウスのそれと異なりT細胞活性化時ですら非常に低レベルに抑制されており、豚の免疫応答におけるIL-12の重要性そのものについての疑問も提起されている。そこで豚におけるIL-12/IL-12Rシステムの生理的役割を明らかにすることを目的として、ブタIL-12Rの構造とその発現制御の詳細について検討した。

成果の内容・特徴

  • ブタIL-12に対する受容体を構成し、シグナル伝達に直接関与するIL-12Rβ2サブユニット遺伝子を単離し、その塩基配列および構造を決定した(Genbank登録 AF330213)。
  • ヒトIL-12Rβ1サブユニットのみを発現するヒトTリンパ腫細胞株(Jurkat E6-1)にブタIL-12Rβ2遺伝子を導入し、ヒトIL-12Rβ1/ブタIL-12Rβ2のキメラ型受容体分子を構成的に発現する変異株(10B10細胞)を樹立した(図1)。
  • ブタIL-12Rβ2遺伝子上流のゲノム構造を決定し、5'側上流の転写調節領域を同定した。ブタIL-12Rβ2遺伝子の転写調節領域にはAP1結合配列が見出され、人やマウス等既知のIL-12Rβ2遺伝子のそれとは異なるユニークな構造を有していた。
  • 当該調節領域を挿入したレポーターベクターを由来の異なる種々の培養細胞株に導入してその転写調節活性を測定し、5'側上流域にTリンパ球特異的で外来刺激に依存性のあるプロモーター領域が存在することを明らかにした(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 10B10細胞はヒトおよびブタIL-12依存性にインターフェロン(IFN)-γを産生することから、ヒトおよびブタIL-12生物活性の簡易迅速測定に応用できる。
  • ブタIL-12Rβ2 mRNAはヒトIL-12Rβ2 mRNAと相同性のない非翻訳エクソン(第1エクソン)を有し、またその転写調節も人とはゲノム上の異なる位置に存在するプロモーターに制御されている。これは動物種間でTリンパ球の増殖と活性化に相違が有ることを示している。
  • IL-12Rβ2遺伝子および本研究に先立って我々が単離したIL-2Rα遺伝子(Genbank登録 U78317)は共にTリンパ球特異的に発現するタンパク質であるが、その制御機構は異なっている。それぞれの5'側上流配列を利用することによって、組織特異性や発現量、発現動態の異なる動物用ベクター開発への応用が可能となる。

具体的データ

図1 ブタIL-12R 2遺伝子を構成的に発現する細胞株(10B10)におけるIL-12依存 性のインターフェロン(IFN)- 産生。

 

図2 ブタIL-2R (左)およびIL-12R 2遺伝子(右)5側上流の転写調節領域を挿入 したレポーターベクターの各培養細胞における転写活性の比較。

その他

  • 研究課題名:T細胞ターゲッティングベクターの開発
  • 課題ID:13-04-02-01-24-03
  • 予算区分:交付金プロ/乳房炎 (3210)
  • 研究期間:2001~2004年度
  • 研究担当者:國保健浩、渡邉聡子、窪田宜之
  • 発表論文等:1) Kokuho et al. (2003) Vet. Immunol. Immunopathol. 91:155-160.
                      2) Kokuho et al. (2003) Eur. Cytokine Network Suppl. 14:93.