分離宿主に関連した反芻獣病原細菌Histophilus somni の遺伝的相違
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
ウシやヒツジの髄膜脳脊髄炎、肺炎、生殖器疾患等の原因菌であるHistophilus somni にはRNAポリメラーゼβサブユニット遺伝子(rpoB)の分子系統樹においてヒツジ由来株で形成されるサブグループが存在し、このサブグループはPCR増幅rpoB DNAの制限酵素HincII切断反応により識別できる。
- キーワード:Histophilus somni、rpoB遺伝子、ウシ、ヒツジ
- 担当:動物衛生研・感染病研究部・細菌病研究室
- 連絡先:電話029-838-7739、電子メールでの問い合わせはこちらから。
- 区分:動物衛生
- 分類:科学・参考
背景・ねらい
Histophilus somni のウシ分離株とヒツジ分離株の間には外膜タンパク質プロフィールやゲノムDNAの制限酵素パターンなどに違いが認められていたが、分離宿主に関連した遺伝的多様性の有無については明確な結論が得られていない。本研究ではH. somni の系統分類学的な多様性を明らかにするために、16S rDNAおよびrpoB 遺伝子の塩基配列の決定と分子系統樹解析を行った。
成果の内容・特徴
- 16S rDNAの塩基配列番号28から1491に相当する塩基配列 (1463 bpまたは1465 bp) を決定した。菌株間の配列の相同性は99.4%以上であった。分子系統樹解析の結果、H. somni は均一なクラスターを形成し、分離宿主に関連した違いは認められなかった。
- rpoB遺伝子についてPCRプライマーRpoBfw (5' ACCACTTAGGTAATC GTC 3')およびRpoBrv (5' AATTGGACAAACTCGACC 3')を用いて347 bpのDNA断片を増幅し、塩基塩基配列番号1355から1665に相当する塩基配列 (311 bp)を決定した。菌株間の相同性は98.6%以上であった。分子系統樹解析の結果、H. somni は他の菌種とは異なる独立したクラスターを形成するが、7株のヒツジ由来株はブートストラップ値70%のサブグループを形成することから、H. somni にはヒツジ由来株で構成される分子系統学的に識別可能なサブグループの存在することが明らかとなった。(図1)。
- rpoB 遺伝子の塩基番号1611の塩基配列の違いが制限酵素HincII認識配列の有無に関連することから、菌株の分離宿主とHincII切断部位の有無との関連性について検討した。表1に示すとおり、ヒツジ由来株20株中17株(85%)ではrpoB DNAの277bpおよび70 bpへの切断が認められるのに対してウシ由来株では46株全ての菌株でrpoB DNAの切断は認められず、分離宿主とrpoB DNA切断部位の有無には有意な関連性が認められた(p<0.0001)。
成果の活用面・留意点
- rpoB DNAの塩基配列の相違はH. somniのサブグループの形成と関連し、rpoB DNAのHincII切断反応によってサブグループを識別することが可能である。
- H. somniには分離宿主と関連した系統分類学的な違いが存在することが判明したので、サブグループと分離宿主の関連性ならびにH. somniの遺伝的多様性についてさらに追究する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:牛病原細菌表面タンパク質遺伝子を利用したベクターの構築
- 課題ID:13-02-02-01-21-04
- 予算区分:交付金プロ/乳房炎(3130)
- 研究期間:2001~2005年度
- 研究担当者:田川裕一、花房泰子、星野尾歌織