ブタの非外科的胚移植カテーテル
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要約
代理母(受胚豚)の子宮頚管を経由してブタ胚を子宮角内へ移植するためのカテーテルを考案した。このカテーテルを用いて体外生産胚または体内発育胚を受胚豚に移植すると産子を得ることができる。
背景・ねらい
胚移植技術は、優良家畜の増産に役立つほか、家畜を農場に導入する場合にも、生体ではなく胚で輸送することが可能なことから、輸送コストを低減することができる。また、特定の病原体に汚染されている農場から非汚染農場へ病原体を伝播させることなしに家畜を導入することができるため、感染症の防除にも有効である。ブタでの胚移植は主に開腹手術により行われ、70%程度の受胎率と平均7頭程度の産子が得られるが、特殊な設備・技術を必要とするため、一般的には普及していない。一方、非外科的胚移植は、技術的な問題から実用化に至っていないが、開腹手術の必要がないことから受胚豚への負担が軽く、生産現場での実施も可能である。そこで、子宮角に挿入可能な非外科的胚移植カテーテルを考案し、ブタの胚移植技術の実用化を図る。
成果の内容・特徴
- ブタの非外科的胚移植カテーテルとして、子宮頚管まで挿入できるスパイラル型の外側ガイドカテーテル及びポリエチレンを基本材質として、長さ120 cm、外径3.0mm、内径0.5mmで先端を横穴式にした内側カテーテルを作製した(図1)。カテーテルの安全性に関する試験に問題は認められない。
- この胚移植用カテーテルは、ガイドカテーテル先端から30cm以上挿入し、体外生産胚を移植することで、受胎可能である(表1)。
- 媒精後5日目の体外生産胚を、胚日齢に対して発情周期を1~3日遅らせた受胚豚のべ21頭に移植すると7頭が受胎し、受胚豚の発情周期の違いによる差は認められない(17%~43%)。
- 胚日齢に対して発情周期を0~2日遅らせた受胚豚のべ53頭に体内発育胚を移植したところ、20頭が受胎(38%)し、胚の日齢に対して受胚豚の発情周期を2日遅らせた場合の受胎率(69%)は、1日遅らせた場合(23%)と比べて高い(表2)。
成果の活用面・留意点
- このカテーテルを用いた胚移植は、麻酔・鎮静処置も必要とせず、生産現場での実施が可能である。
- 体内発育胚を用いる場合、供胚豚と受胚豚の発情周期を考慮することで、外科的胚移植と同等の受胎率及び産子数を得ることが期待できる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:生産病の病態解析による疾病防除技術の開発
- 課題ID:212-k
- 予算区分:委託プロ(アグリバイオ)
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:吉岡耕治、鈴木千恵、中野貞雄(富士平工業)、柴田貴子(愛知県農総試)、
検崎真司(鹿児島県農総セ)、仲澤慶紀(神奈川県畜技セ)、中村嘉之(埼玉県農総研)、
中根崇(千葉県畜総研)
- 発表論文等:1)Suzuki et al.(2004)J. Reprod. Dev. 50:487?491.
2)吉岡・鈴木(2006)All about swine 29:12-18.