わが国における豚の離乳後多臓器性発育不良症候群の特徴と診断
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要約
わが国における豚の離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の有病率は極めて高く、その対策には個体診断とともに、流行型と常在型に区別した農場診断が必要である。PMWSの発症ならびに増悪化のリスクファクターとしては、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスやMycoplasma hyorhinisが重要である。
背景・ねらい
離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)はブタサーコウイルス2型(PCV2)感染を主要原因とする豚の新興感染症である。PCV2は多くの農場に常在しているため、PMWSの診断と病理発生については未確定な部分が多い。そこで、全国都道府県の家畜保健衛生所ならびに病性鑑定機関と共同実施している診断予防技術向上対策事業「PMWS」の調査結果から、PMWSの有病率、農場における発生の特徴および感染性リスクファクターについてまとめ、PMWSの診断ならびに対策指針を示すことを目的とする。
成果の内容・特徴
- 2000年4月~2003年3月の4年間に、26府県の129農場において離乳後に発育不良を示した豚692頭中162頭(23.4%)が、複数のリンパ組織に中~多量のPCV2抗原を含む特徴病変を有したことからPMWSと診断される(単独リンパ節に軽度な病変がある場合は除外)(図1)。
- 129農場中65農場(50.4%)にPMWS陽性豚が認められ、その育成豚(30-120日齢)の死亡率は0.1%から32.0%と様々である。PMWS陰性農場(64農場)、陽性農場(65農場)および検査豚の半数以上が陽性豚である高頻度発生農場(29農場)間で育成豚の死亡率を比較すると、陰性農場と陽性農場間では7.6±6.8%と8.8±6.4%で差がなく、高頻度発生農場では10.9±7.2%で、陰性農場に比べ有意に高い(p<0.05)。以上から、PMWSには育成豚の死亡率上昇が明瞭な流行型と顕著な死亡率上昇として現れない常在型あるいは散発型の2型が考えられる。
- PMWS陰性豚と陽性豚間において各種病原微生物の検出率を比較すると(表1)、陽性豚において豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスとMycoplasma hyorhinisが高率に検出され(p<0.05)、これらはPMWS発症や増悪化のリスクファクターであると考えられる。
成果の活用面・留意点
PMWSの対策法策定には、育成豚の死亡率を平時のものと比較すること、発育不良豚の複数のリンパ組織について病理組織学的検査を実施し個体診断すること、複数豚の剖検により農場内での頻度を確認することで、農場の発生型を流行型と常在型に型別診断する必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:環境性・常在性疾病の診断と総合的防除技術の開発
- 課題ID:322-g
- 予算区分:交付金プロ(形態・生理)
- 研究期間:2004~2006年度
- 研究担当者:川嶌健司、勝田賢、恒光裕
- 発表論文等:Kawashima et al. (2007) J. Vet. Diagn. Invest. 19: 60-68.