ウシ末梢神経におけるBSEプリオンの蓄積時期
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要約
牛海綿状脳症(BSE)実験感染牛より経時的に採材された組織について異常プリオン蛋白質(PrPSc)の蓄積の有無を調べた。末梢神経および副腎におけるPrPScの蓄積は、脳におけるPrPScの蓄積時期と同時に、あるいは遅れて認められる。
背景・ねらい
ヒトのプリオン病の1つである変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が、BSE感染牛に由来する食品を摂取したことによるウシからヒトへのBSEの伝播により発生したことから、牛肉の安全性を確保するため特定危険部位(SRM:舌・頬肉を除く頭部、脊髄、脊柱、回腸遠位部)の除去が義務づけられている。SRMは、これまでに行われてきたBSE感染牛のさまざまな組織を用いた感染試験および各組織におけるPrPScの蓄積の有無を指標に定められている。しかし、近年、SRM以外の部位である末梢神経にPrPScが検出され、感染性も認められた。このことは、末梢神経にもBSEリスクが存在することを意味する。一方、末梢神経にPrPScが蓄積する時期は未だ明らかとされておらず、BSEのリスクを評価するためには末梢神経にPrPScが蓄積する時期を知ることは重要である。そこで、BSE経口感染牛より経時的に採材された組織についてPrPScの蓄積の有無を調べ、末梢神経にPrPScが蓄積する時期を明らかにする。
成果の内容・特徴
- BSE実験感染牛(表1)の組織(脳・脊髄、背根神経節、末梢神経および副腎;英国Veterinary Laboratory Agencyより提供を受けた)について、ウェスタンブロッティング(WB)法によりPrPScの検出を行った。PrPScは脳・脊髄、背根神経節だけでなくSRMに含まれていない末梢神経および副腎にも検出される。
- 脳組織(延髄)を用いた確定検査(BSE検査)により陽性(脳組織にPrPScが検出される)と判断された個体の末梢神経および副腎にPrPScは検出される。
- BSE検査で陰性であった個体の組織からはPrPScは検出されない。
- BSE経口感染牛において、末梢神経および副腎におけるPrPSc 蓄積は、中枢神経系組織(脳・脊髄)でPrPScが検出されるのと同時期、またはその後に認められる(図1, 2)。
成果の活用面・留意点
- SRM除去だけでは、BSEの感染性を完全に排除することが出来ないが、延髄を用いた現行のBSE検査により、BSE陽性牛を摘発・淘汰することで末梢神経および副腎におけるBSE感染リスクを回避できる。
- 末梢神経のPrPScは、中枢神経系組織で増幅したBSEプリオンが、下降性に蓄積したと考えられる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:プリオン病の防除技術の開発
- 課題ID:322-d
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006~2007年度
- 研究担当者:舛甚賢太郎、Danny Matthews、Gerald A. H. Wells、毛利資郎、横山隆
- 発表論文等:Masujin et al.(2007) J. Gen. Virol. 88:1850-1858