リアルタイムPCRによるヨーネ病遺伝子診断法
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要約
2ヶ月以上を必要とする従来のヨーネ菌分離培養検査に比べ、糞便中ヨーネ菌遺伝子をリアルタイムPCR法により検出・定量することにより、数時間以内にヨーネ菌排菌牛を摘発することが可能である。
- キーワード:ヨーネ病、ヨーネ菌、遺伝子診断法、リアルタイムPCR
- 担当:動物衛生研・ヨーネ病研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7708、電子メールwww-niah@affrc.go.jp
- 区分:動物衛生
- 分類:技術及び行政・普及
背景・ねらい
ヨーネ菌の経口感染により反芻獣に慢性肉芽腫性腸炎を起こすヨーネ病は、我が国で最も多発する牛の法定伝染病であり、診断淘汰により防疫が進められているが、漸増傾向を示し診断法の改良が急務とされている。感染牛からのヨーネ菌分離培養は有用な診断方法であるが、本菌は固形培地での増殖が極めて遅くコロニーを形成するまでに2~5ヶ月間を必要とする。このような長期間を必要とする診断法に替わって、糞便中の本菌特異遺伝子を検出することにより、数時間以内に判定が可能な迅速診断方法を開発する。
成果の内容・特徴
- ヨーネ菌が保有する特異挿入配列IS900をターゲットとして、蛍光色素インターカレーション法によるリアルタイムPCRを開発した。本法を用いることにより検体中のヨーネ菌DNA 1fgを検出することが可能である(図1、2,3、表1)。
- 種々の抗酸菌58株を用いて特異性を検討したが、ヨーネ菌以外の抗酸菌との反応は認められなかった。特に、ヨーネ菌IS900と94%以上の相同性を有する遺伝子をもつMycobacterium sp. 2333株とも交差反応は認められず、本法の高い特異性が明らかとなった(表2)。
- リアルタイムPCRによりヨーネ菌DNAの定量が可能であり、糞便中のヨーネ菌々数を推計することが可能である(図4)。
- 平成18年11月に農林水産省消費・安全局動物衛生課から公開されたヨーネ病検査要領の自主淘汰の為の検査方法としてリアルタイムPCRによる遺伝子検査が採用されている。
成果の活用面・留意点
- 糞便中のヨーネ菌遺伝子を特異的且つ高感度に検出・定量することにより、従来の菌培養法に比べヨーネ病の迅速な検査が可能となり、ヨーネ病の防疫を効率的に進められる。
- 現時点で最も特異性の高いヨーネ病診断法の一つであり、鳥型結核菌等のヨーネ菌以外の類似抗酸菌感染が疑われる牛群の類症鑑別法として有効である。
- ヨーネ菌液体培養法と組み合わせることにより、培養検査でのヨーネ菌増殖を早期に検出することが可能である。
- 遺伝子検出感度が極めて高いことから、検査過程でのヨーネ菌DNAの汚染には十分な注意を払うことが重要である。また、本検査陰性にもかかわらず糞便等からヨーネ菌が分離される例もあることから、現状では培養検査を併用することが必要である。
具体的データ






その他
- 研究課題名:ヨーネ病の発症機構の解析と診断技術の高度化
- 課題ID:322-f
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2003~2006年度
- 研究担当者:森 康行、永田礼子、田中省吾、吉原一浩、王暁斐、百溪英一、西森 敬
- 発表論文等:「牛のヨーネ病防疫対策要領」及び「ヨーネ病検査要領」
(農林水産省消費・安全局動物衛生課、平成18年11月)