牛呼吸器病原因菌Mannheimia haemolyticaの血清型動向

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要約

牛呼吸器病由来M. haemolytica 208株の90%以上が3種類の血清型(1型、2型および6型)に分類される。近年、分離割合が増加している血清型6型菌は、パルスフィールド電気泳動法(PFGE)の結果から、非常に近縁な遺伝子型菌株の流行と推察される。

  • キーワード:ウシ、呼吸器病、血清型別、パルスフィールド電気泳動法、遺伝子型別
  • 担当:動物衛生研・環境・常在疾病研究チーム
  • 連絡先:電話0176-62-5115、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

牛呼吸器病の原因菌であるMannheimia haemolyticaは、莢膜の抗原性により12種類の血清型に分類されるが、病変部から分離される本菌の50-60%が血清型1型に属する。
近年、米国において呼吸器病罹患牛から血清型1型以外の菌株が高率に分離されることが報告された。わが国においても、同様な変化が生じている可能性が推察されるが、本菌の血清型を対象とした野外調査は殆ど実施されていないため、実態は不明である。本研究では、M. haemolyticaの血清型の分布状況を調査し、わが国における本症の疫学実態を解明する。

成果の内容・特徴

  • 1987年から2006年に21県で分離された呼吸器病罹患牛由来M. haemolytica 208株について血清型別を実施したところ、血清型1型102株(49.0%)、血清型2型47株(22.6%)、血清型6型42株(20.2%)、血清型7型、9型、13型および14型にはそれぞれ1株が分類され、残りの13株(6.3%)は血清型別不能菌株である(表1)。
  • 血清型1型菌と2型菌については、調査期間を通じて分離が確認されるが、血清型6型菌は1995年に初めて確認され、その後、分離割合が増加しており、調査21県中11県で本血清型菌株が分離されている(表1)。
  • 血清型6型菌は血清型1型菌とは異なる遺伝子群を構成し、またPFGEにおいて検出される2~5箇所のフラグメントの違いに基づいて4PFGE遺伝子型(A~D)に分類される。遺伝子型Aには26株、Bには4株、Cには4株、Dには8株が分類される(図1、図2)。
  • 以上の結果から、わが国で近年分離される頻度の高い血清型6型菌は、非常に近縁な遺伝子群の菌株の流行によるものと推察される。

成果の活用面・留意点

  • 血清型別不能菌株は、M. haemolytica以外のMannheimia属菌の可能性があるので、16SrRNA塩基配列の決定による菌種の同定が推奨される。
  • 本菌の血清型別は動物衛生研究所で病性鑑定業務として実施している。

具体的データ

表1 .M. haemolyticaの血清型別結果

図1 .PFGEバンドパターンに基づく系統樹解析図2.血清型6型菌に認められた4PFGE 遺伝子型(A~D)

その他

  • 研究課題名:環境性・常在性疾病の診断と総合的防除技術の開発
  • 課題ID:322-g
  • 予算区分:人畜共通感染症等危機管理体制整備調査等委託事業
  • 研究期間:2006年度
  • 研究担当者:勝田賢、河本麻理子、川嶌健司