採卵用成鶏における全身性アミロイド沈着のみられた皮膚型鶏痘
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要約
鶏痘ワクチン接種済みの採卵用成鶏で皮膚型鶏痘が発生した。組織学的に全身のアミロイド沈着、皮膚のStaphylococcus hyicus感染のみられた壊死性増殖性皮膚炎を示す。
- キーワード:鶏痘、アミロイド、皮膚型、Staphylococcus hyicus、採卵用成鶏
- 担当:動物衛生研・ウイルス病研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7708、電子メール www-niah@naro.affrc.go.jp
- 区分:動物衛生
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
鶏痘は鶏痘ウイルスによっておこる鶏の重要な疾病で、病型は皮膚型と粘膜型に分かれる。皮膚型では病変は主に肉冠、肉垂、顔面、脚などの羽のない部位にみられ、羽毛のある部位ではまれである。鶏痘はワクチネーションによって半世紀以上予防されている。しかし、最近鶏痘が再び流行している。このような鶏痘の流行の原因はよくわかっていない。また、水禽類や野鳥のアミロイド症の報告は多いが、鶏のアミロイド症の報告は少ない。我々は採卵用成鶏に発生した、アミロイド症を伴う皮膚型鶏痘を病理学的に調べ、その病理発生を検討した。
成果の内容・特徴
- 鶏痘ワクチン接種済みの採卵用成鶏において、皮膚型鶏痘がみられた。本鶏群では重度のワクモ感染がみられた。
- 肉眼的には、顔面および頚部から翼部、胸部、腹部、尾部の羽毛部の皮膚において、痂皮、結節形成、脱毛がみられる(写真1)。
- 組織学的には、皮膚のStaphylococcus hyicus感染を伴う壊死性増殖性皮膚炎を示す(写真2)。表皮細胞は風船状に腫脹し、細胞質内好酸性リング状封入体が多数みられる(写真3)。羽毛部では、羽包上皮の細胞質内封入体を伴う増殖と壊死(写真4)、羽の変性がみられる。皮膚以外では、脾臓濾胞、気管支粘膜固有層、肝臓ディッセ腔(写真5)、心内膜にアミロイド沈着がみられる。
- 皮膚の PCR検査により鶏痘ウイルスの遺伝子が検出されている。細菌検査では、皮膚から Staphylococcus hyicusが分離されている。電子顕微鏡検査では、皮膚の封入体に一致して、直径約300nmのポックスウイルス粒子が確認されている(写真6)。
成果の活用面・留意点
- 羽毛部皮膚での広範な皮膚病変は、鶏痘ウイルスの羽包上皮での増殖によると考えられる。羽毛部での脱羽は、ウイルスによる羽包上皮の増殖および細菌感染による羽の変性によると思われる。
- ワクチンの効果が有効でなかった原因は不明であるが、アミロイド症、S. hyicus、ワクモ感染等が今回の皮膚炎の発生、増悪に関連すると思われる。
具体的データ



その他
- 研究課題名:ウイルス感染症の診断・防除技術の高度化
- 課題ID:322-b
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006年度
- 研究担当者:中村菊保、早稲田万大(長崎県)、山本佑、山田学、中澤宗生、秦英司、寺崎敏明(東京都)、
塩谷暁生(ゲン・コーポレーション)、今田忠男、今井邦俊(帯広畜産大学)。
- 発表論文等:Nakamura et al. (2006) Avian Dis. 50,152-156.