牛ウロコルチン2遺伝子の新規クローニングと発現定量
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要約
牛の神経ペプチドの一種、ウロコルチン2 (Ucn2)の牛ヨーネ病における役割を解明する為に、牛Ucn2遺伝子の塩基配列を世界ではじめて確定し、その塩基配列を元に牛Ucn2のmRNA遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRにより定量する。
背景・ねらい
ヨーネ病は家畜伝染病予防法に定められた伝染病である。その病理発生機序は複雑で、そのため現在においてもその防疫が遅れている。 ヨーネ病は感染後のステージにより免疫状態が微妙に変動し、そのことが診断を困難にし、診断、防疫に影響してきた。そのため、ヨーネ病に対する早期の的確な診断には複数のパラメーターを設定し診断精度を向上させる必要がある。我々はこれまでに牛の神経ペプチドの一種ウロコルチン遺伝子のクローニングおよび遺伝子発現定量法、ヨーネ病の診断法への応用を報告してきた。そこで、ウロコルチンの属するコルチコトロピン放出因子(CRF)ファミリーの一つであるウロコルチン2(UCN2)の研究も進めていくこととした。UCN2は哺乳類のストレス応答のprimaryなメディエーターとして重要であり、Listeria monocytogenesの感染において、UCN2が菌増殖促進に関与しているという報告があるが、他の感染症では全く不明である。本研究のねらいは従来、牛においてその存在や分布が明らかにされていない、神経ペプチドに分類されるコルチコトロピン放出因子(corticotropin-releasing factor, CRF)の一種ウロコルチン2(Ucn2)のcDNAのクローニングと遺伝子発現定量法の開発を行うことである。
成果の内容・特徴
- 免疫抑制に関連する神経ペプチドの遺伝子発現を調べるため、牛の末梢血単核細胞をLPSで24時間刺激し、3'-ないし5'-RACE法によりウロコルチンのcDNAをクローニングした。(図1)
- 得られた遺伝子配列を基に想定されるアミノ酸配列を既知の動物種のUcn2と比較したところ、ヒトと72%、マウスと62.5%、ラットと61.6%の相同性が確認された。
- 牛Ucn2遺伝子の発現を測定するためのプライマーをデザインし(図2)、RT-PCRにおける検出(図3)および定量RT-PCR(Q-RT-PCR)での良好な増幅(図4)を確認できた。
- ヨーネ菌全菌体可溶化抗原で不顕性感染実験牛と非感染ウシの血液を刺激した場合と無刺激の条件で一晩培養した血液細胞中に発現するUcn2を定量的RT-PCRにより経時的に測定したところ、感染ウシでは菌抗原刺激後3時間目に有意な発現量増加が見られることがわかった。(図5)
成果の活用面・留意点
- ヨーネ病の病理発生における牛ウロコルチン2の役割解明に活用する。
- Ucn2はCRFファミリーの一つで、中枢および末梢における役割解明を他のCRFと比較し明らかにしていく必要がある。
具体的データ





その他
- 研究課題名:ヨーネ病発症機構の解析と診断技術の高度化
- 課題ID:322-f
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006年度
- 研究担当者:百溪英一、王宏宇、王暁斐
- 発表論文等:1) Wang and Momotani (2004). Bos taurus Ucn2 mRNA for urocortin. complete cds.
遺伝子DB登録:Gene Bank accession No. NM_001032301. 9月6日登録.