東京湾周辺地域に生息する野鳥のサルモネラ保菌状況と分離株の性状
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要約
東京湾周辺地域に生息する各種野鳥のサルモネラ保菌状況を調査した。52種、412羽の糞便検体からの分離率は5.6%(23羽)で全てSalmonella Typhimurium(ST)であった。また脚指240検体からの分離率は9.2%(22羽)で、ST以外に5血清型が分離された。野鳥はサルモネラの重要な保有体である。
- キーワード:野鳥、サルモネラ、保菌率、Salmonella Typhimurium
- 担当:動物衛生研・疫学研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7708、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
- 区分:動物衛生
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
国内における野鳥のサルモネラ保有状況はツル、カラスやハトで僅かに報告があるもののほとんど明らかにされていない。一方、サルモネラは家畜や人にも感染するため、自由に飛来する野鳥のサルモネラ保有状況の調査は家畜衛生および公衆衛生上の観点から極めて重要である。本研究では、2003~2006年にわたり東京湾周辺地域に生息する各種野鳥の糞便および脚指から分離されるサルモネラの種類と保有率を調査した。
成果の内容・特徴
- 野鳥の糞便(クロアカスワブ)および脚指材料からのサルモネラの鑑別分離には,検査材料をTSBで増菌した後、HTTおよびラパポート液体培地で2回選択増菌し、増菌液をESサルモネラ培地IIに接種する方法が優れている。
- 糞便412検体からのサルモネラ分離率は5.6%(23羽)で全てSalmonella Typhimurium(ST)であったのに対し、脚指240検体からの分離率は9.2%(22羽)で、ST以外に5血清型(S. Virchow, S. Schwarzengrund, S. Bareilly, S. BovismobificansおよびS. Munchen)が分離された(表)。
- 糞便および脚指から分離されたST株は、ほぼ全てのサルモネラ有効抗菌薬剤に対し感受性を示したが、他の血清型株はテトラサイクリン系やアミノグリコシド系等の薬剤に多剤耐性を示すものが多かった。
- 分離された37株のSTのうち16株はDHL培地で硫化水素産生が確認されなかった。
成果の活用面・留意点
- 野鳥の保有するサルモネラ鑑別分離にはESサルモネラ培地IIが有用である。サルモネラ分離に一般的に用いられるDHL培地を供試する場合は硫化水素非産生のST株が存在することに留意する必要がある。
- サルモネラの脚指からの分離率は9%以上であり、しかもST以外の血清型株は薬剤耐性株であったことから、野鳥を家畜衛生および公衆衛生上重要な伝播体と認識し、日常の衛生管理において、畜舎等への侵入防止対策を徹底する必要がある。
具体的データ

その他
- 研究課題名:疾病及び病原体の疫学的特性解明による防除対策の高度化
- 課題ID:322-h
- 予算区分:委託プロ(BSE・人獣)
- 研究期間:2005~2009年度
- 研究担当者:小林秀樹、秦 英司、久保正法、西森 敬、江口正志
- 発表論文等:Kobayashi et al. (2007) J. Vet. Med. Sci. 69(3): 309-311.