ブルセラ病診断用ELISAキットの実用化
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
ブルセラ病感染牛の診断法としてELISA法によって作製した検査キットは補体結合反応と同等の高い感度と特異性を持ちかつ短時間で検査できる。
- キーワード:牛、ブルセラ病、ELISA、血清学的診断
- 担当:動物衛生研・次世代製剤開発チーム
- 連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
牛ブルセラ病はBrucella abortus 菌を原因とする世界的に重要な人獣共通感染症であ
る。研究成果情報は感染牛の診断法として国際獣疫事務局(OIE)が推奨する間接ELISA法の感度と特異性を、高度汚染国から輸入した自然感染牛血清及
び陰性と考えられる国内牛ブルセラ病検査済血清を用いて評価するとともに、チッソ株式会社横浜研究所と共同して国内での実用化を目指すものである。
成果の内容・特徴
- OIEマニュアルに従ってB. abortus 国際製造用株から精製したリポ多糖抗原及び国際ELISA標準血清を使用して作出した間接法ELISA系である。
- 自作モノクローナル抗牛IgG1-H鎖標識抗体を使用することによってELISAの検出感度と特異性を安定して確保できる(図1)。
- このELISAによる自然感染牛血清の検出感度は99.6%と、現在最も感度と特異性に優れるとされる補体結合反応の99.0%と同等であり、かつ陰性であるべき国内牛血清は検出しない(図2)。
- 補体結合反応は煩雑かつ熟練を要する上判定までに最低でも2日間を要するが、ELISAでは単純な操作で2時間以内に同等の感度及び特異性で判定することができる。
- このELISAの性能は海外2社の市販キットと比べても遜色はない(図3)。
- 製造販売承認申請に必要な各種試験を終え、2月にチッソ株式会社横浜研究所から農林水産省に申請書を提出した。
成果の活用面・留意点
- 現行の牛ブルセラ病検査法ではOIEが感度及び特異性が低いとする試験管凝集反応を重視していることから、自然感染牛の
14.5%が補体結合反応で検査されることなく健康と判定される可能性があるが、ELISAをスクリーニングに使用することでこの危険性をなくすことが可
能である。
- ELISA法でも共通抗原を持つ細菌との交差反応の可能性はゼロではないため、感染牛の最終的な判定には疫学情報や菌分離を加味する必要がある。
- このELISAキットを牛ブルセラ病の検査に使用するためには、製造販売承認後に本検査法を家畜伝染病予防法施行規則別表第一に加える必要がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:生体防御能を活用した次世代型製剤の開発
- 課題ID:322-i
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2006~2007年度
- 研究担当者:今田由美子、若本裕晶(チッソ)
- 発表論文等:1)今田由美子ら(2006)第142回日本獣医学会講演要旨集、97