2005年に茨城県で分離されたH5N2鳥インフルエンザウイルスの性状
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要約
日本で分離されたH5N2鳥インフルエンザウイルスは、中米で流行していたウイルスを起源とし、ニワトリに対して臨床症状を示さずに容易に伝播するウイルスである。
- キーワード:鳥インフルエンザウイルス、H5N2、ニワトリ、順化
- 担当:動物衛生研・人獣感染症研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:行政・普及
背景・ねらい
2005年6月、茨城県下でH5N2鳥インフルエンザウイルスA/chicken/Ibaraki/1/2005
(H5N2)が分離された。本研究では、本ウイルスの性状および進入経路を明らかにするため、遺伝子解析を行うとともに、ウイルスの感染拡大防止に資する
ことを目的として、鶏への感染性、伝播性および抗体持続期間を明らかにした。
成果の内容・特徴
- 遺伝子解析の結果、一連の発生で分離された計16株のウイルスの塩基配列の相同性は互いに98%以上一致していた。
- 遺伝子系統樹解析により、本ウイルスのHA遺伝子は中米で流行したウイルスA/chicken/Guatemala/45511-3/00 (H5N2)と最も相同性が高く(97.5%)、過去に日本で分離されたウイルスとは異なったクラスターに属した(図1)。
- 本ウイルスを実験感染させたニワトリは、臨床症状を示さず、呼吸器から高率にウイルスが排泄され(図2)、同居伝播やケージ間伝播を容易に起こす。
- 本ウイルスを感染させたニワトリは、寒天ゲル内沈降反応では3ヶ月以上、赤血球凝集阻止反応を利用した検査では1年間と長期間にわたり血液中に抗体が検出される。
成果の活用面・留意点
- 分離ウイルスの分子疫学解析は、農水省感染経路究明チームによる感染経路究明に貢献した。
- 抗体検査法の有用性が確認され、本病に対する全国での清浄化対策に利用された。
- 本ウイルスのような、弱毒型の高病原性鳥インフルエンザウイルス感染では、臨床症状のみでの罹患鶏の発見は困難であり、全国で行われている高病原性鳥インフルエンザ浸潤調査の重要性を確認した。
具体的データ


その他
- 研究課題名:新興・再興人獣共通感染症病原体の検出および感染防除技術の開発
- 課題ID:322-a
- 予算区分:競争的研究資金(高度化事業)
- 研究期間:2005~2006年度
- 研究担当者:岡松正敏、西藤岳彦、山本佑、真瀬昌司、中村菊保、塚本健司、山口成夫
- 発表論文等:
1.Okamatsu et al. (2007) Vet Microbiol 124(1-2), 35-46.
2.Okamatsu et al. (2007) Avian Dis 51(1 Suppl), 474-475.
3.農林水産省高病原性鳥インフルエンザ経路究明チーム報告書
http://www.maff.go.jp/tori/kentoukai/report2005.pdf