運動リズム解析による牛歩行異常早期摘発システムの開発
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要約
加速度センサーによって牛の四肢の動きを捉え、そのデータをもとに歩行スコアを算出する方法を開発した。乳牛の蹄病などに起因する歩行異常の摘発に有効である。
- キーワード:蹄病、加速度センサー、DFA解析
- 担当:動物衛生研・生産病研究チーム・環境常在疾病研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
蹄病をはじめとする運動器疾患は、繁殖障害、乳房炎とともに乳牛における三大病のひとつとなっており、死廃原因の17%を占めて
いる(平成17年度家畜共済統計)ほか、増体低下や泌乳量低下の直接の原因ともなる。運動器疾患の対策には早期発見が最も重要であるが、多頭化され飼育環
境の中では十分に監視の目が行き届かず、重症化してから発見されるケースが多い。そこで本研究では、加速度センサーを牛に応用することにより、これまで人
の目に頼っていた歩行などの歩行異常を客観的に測定することを目的とする。
成果の内容・特徴
- 歩行データ解析方法の検討:牛の運動リズム測定のための装着部位、装着方法の検討:加速度センサー(マイクロストン社製)およびデータロガー(データの記憶装置)の装着方法について、なるべく牛にストレスを与えず、且つすばやく脱着できる器具の作製、改良を行なった(図1)。また加速度センサーの感度について検討した結果、四肢には±5G、背中の場合は±2Gが適当であった。
- 歩行異常摘発のための検討:動衛研内で飼育されている牛約15頭を用いて、四肢および背中に加速度センサーを取り付け歩行運
動のデータを採取した。得られたデータを元に歩行の揺らぎ解析(DFA解析)を行い、歩行異常の数値化法を開発した。すなわち、牛の歩行データのDFA解
析結果を、あらかじめ設定されたピーク間隔時間(理想的跛行状態を想定)のDFA解析結果と比較して、そのパターンが一致する割合をスコアとして算出し
た。この数値を用いた場合、肉眼的に歩行異常を示す牛は0.2以上のスコアを示す(図2)。また同じ牛で繰り返し歩行データを採取した場合のスコアの再現性はほぼ良好である。
- 加速度センサーのデータを解析し、歩行スコアを算出するソフトウェアを開発した。
- 北海道農業研究センターの乳牛約40頭を用いて、人の目で見た歩行状態や蹄の状態と、歩行スコアとの関連について検討したところ、後肢異常についてはほぼ正確に検出することができた(図3)。前肢についてはばらつきが多くなったが、これは前肢のピーク強度が後肢に比べて小さく、ノイズの影響があると考えられる。
成果の活用面・留意点
- 再現性のよいデータを得るためには、平坦な路面を20-30メートル歩かせる必要ある。
- 現在のところ、歩行運動の数値化および後肢異常の検出については可能であるが、早期診断への有用性についてはまだ実証されておらず、今後検討していく必要がある。
具体的データ



その他