スクレイピー感染ハムスターにおける血液および尿中のプリオン検出

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要約

ハムスタースクレイピー株、Sc237をハムスターに経口接種し、血液および尿における異常プリオン蛋白質(PrPSc)の有無をPMCA法で解析した。白血球分画では潜伏期から、血漿分画では発症期以降にPrPScが検出されるが、尿では感染直後と末期のみに認められる。

  • キーワード:スクレイピー、ハムスター、PMCA、血漿、白血球、尿
  • 担当:動物衛生研・プリオン病研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

伝達性海綿状脳症(TSE)を引き起こす感染性因子、プリオンは、主に異常プリオン蛋白質(PrPSc)から成っている。スクレイピーに感染した齧歯類の尿には極めて低いレベルの感染性が検出されているが、尿中PrPScの存在は証明されていない。尿由来の生物製剤の安全性確保やプリオン病の水平感染の可能性を検討するには、感染後の尿中PrPScの動態に関する研究が不可欠である。本研究では試験管内でPrPScを増幅するPMCA (protein misfolding cyclic amplification)法を用いて、血液および尿中のPrPScの有無を検証する。

成果の内容・特徴

  • Sc237感染ハムスター脳乳剤をハムスターに経口投与した。投与ハムスターは平均171日で発症・死亡したが、運動失調などの臨床症状、PrPScの脳内蓄積は接種後100日以降に顕著になった(図1)。
  • 血液および尿を定期的に採取した。ヘパリン加血液は遠心して、血漿と白血球に分画した。尿は10倍希釈後、メンブレンフィルターで濾過し、メンブレン上に捕捉された白血球や上皮細胞を界面活性剤で可溶化し、遠心回収した。各サンプルに含まれるPrPScをPMCA増幅し、ウェスタンブロット法で検出した。
  • 潜伏期(75日)以降に採取したすべての白血球分画からPrPScが検出された。また、発症期(103日)以降に採取された血漿分画にもPrPScが検出された(図1)。
  • PrPScの尿中への排泄は感染直後(4日)および末期(155日)に認められた。一方、投与後30日から147日まではPrPScは検出されなかった(図1)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究はTSE感染動物の尿からPrPScをはじめて生化学的に検出した例である。PMCA法は動物に接種し、発症の有無で判定するバイオアッセイよりも検出感度が極めて高く、検出された尿PrPSc量では感染は生じない。
  • 白血球分画では潜伏期からPrPScが検出され、早期診断が可能であることを示唆している。しかしながら羊スクレイピーやBSEにおける体液中のPrPSc動態を検証するには、各PrPScに適した増幅条件を確立する必要がある。

具体的データ

図1. 経口感染ハムスターにおける臨床症状とPrPSc検出性.

 

その他

  • 研究課題名:プリオン病の防除技術の開発
  • 課題ID:322-d
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:村山裕一、吉岡都、岡田洋之、高田益宏、横山隆、毛利資郎
  • 発表論文等:Murayama et al. (2007) J. Gen. Virol. 88:2890-2898.