飼料中ダイオキシン類の簡易スクリーニング手法
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要約
試料の前処理法を改良し、CALUXアッセイあるいは市販ELISAキットを適用することにより、飼料中ダイオキシン類を迅速・安価に測定できる。この方法は短時間で多検体測定が可能で、飼料中ダイオキシン類のスクリーニングに有効である。
- キーワード:飼料、ダイオキシン類、スクリーニング、CALUX、ELISA
- 担当:動物衛生研・安全性研究チーム
- 連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:行政・参考
背景・ねらい
畜産物のダイオキシン類(PCDDs/DFs,
Co-PCBs)汚染はほとんどが飼料に起因するため、飼料中でのこれらの汚染を監視・制御することは重要である。しかし、公定分析法では煩雑な前処理を
必要とする上、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(HRGC/HRMS)が用いられ、分析費用も高価であることから、より簡便で安価な分析法の開発が
望まれている。そこで、相対的にダイオキシン類濃度が高いことが知られている魚油を対象として、前処理を簡易化し、レポータージーンアッセイやイムノアッ
セイを検出系として用いて多検体の飼料中ダイオキシン類を迅速・安価にスクリーニングできる分析手法を開発する。
成果の内容・特徴
- 魚油試料のダイオキシン類を公定法(暫定ガイドライン、図1A)に従って機器分析し、毒性等量(TEQ)を算出して分析法比較の基準とした。今回開発した硫酸シリカゲルによる試料前処理法は、1/10の試料量で公定法による前処理と同等の効果がある。
- 魚油47検体を図1B
の方法で前処理し、マウス肝がん細胞を用いたレポータージーンアッセイであるCALUX(Chemical Activated LUciferase
gene eXpression)法で測定した結果と、機器分析により求めたTotal(PCDDs/DFs + Co-PCBs)
TEQとは高い相関があり、この方法で魚油中ダイオキシン類濃度を迅速に測定できる(図2)。
- 魚油15検体を図1C
の方法で前処理し、PCB118を測定対象とする市販ELISAキット(EnBio Coplanar PCB EIA
System)で測定した結果は、機器分析によるTotal TEQと高い相関があり、この方法によっても魚油中ダイオキシン類濃度を迅速に測定できる(図3)。
- これらの簡易スクリーニング手法において、魚油25検体を同時に処理した場合の分析時間及び費用(単価)を公定法と比較すると、時間では1/4~1/10、費用では1/3~1/5程度と概算された。
成果の活用面・留意点
- スクリーニング測定で一定基準値を超過したサンプルについては最終評価のため公定法で再測定するといった利用法が有効と考えられる。特に魚油の場合、ELISAは細胞培養が不要な上、市販キットを使用するため汎用性が高い。
- ダイオキシン類が低濃度でその組成も一様ではない配合飼料や植物性飼料原料などについては、ELISAの適用に限界があるため、CALUXアッセイの利用が望ましい。
具体的データ



その他
- 研究課題名:飼料・畜産物の生産段階における安全性確保技術の開発
- 課題ID:323-d
- 予算区分:競争的研究資金(高度化事業)
- 研究期間:2005~2007年度
- 研究担当者:グルゲ・キールティ・シリ、長谷川淳、山中典子、宮崎茂、白井祐治(農林水産消費安全技術センター) 、山多利秋(農林水産消費安全技術センター)、中村昌文(株式会社 日吉)
- 発表論文等:
1) Hasegawa et al. (2007) Chemosphere. 69: 1188-1194.
2) Hasegawa et al. (2007) Organohalogen Compounds. 69: 126-129.