特異的遺伝子の多重検出によるサルモネラ主要血清型迅速同定法

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要約

監視伝染病に含まれる5つのサルモネラ血清型を同定するためには従来、培養開始から約2週間を要したが、PCR法を利用した血清型特異的遺伝子の多重検出という新規手法により、5日で同定可能である。

  • キーワード:サルモネラ、血清型、迅速同定法、特異的遺伝子、多重検出、PCR
  • 担当:動物衛生研・安全性研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

飼料検査や食肉衛生検査の現場では、分離されたサルモネラが監視伝染病に含まれるか否かでその後の対応が異なるため血清型の判定が必要となるが、現在の血清型別法では培養開始から血清型判定までに約2週間を必要とする。PCR法を応用した迅速同定法に関する報告は散見されるが、いずれも実用段階にない。本研究は血清型特異的遺伝子の多重検出により、サルモネラの主要血清型を迅速かつ正確に同定する方法の開発を目的とする。

成果の内容・特徴

  • 血清型Typhimurium、Choleraesuis、Dublin、Enteritidis、Gallinarumの全ゲノム塩基配列を用い、比較ゲノム解析と類似配列検索により、各血清型特異的遺伝子候補を3つに絞り込むことができる。
  • 監視伝染病に含まれる5血清型と、その他118血清型に属する野外分離サルモネラから各標的遺伝子のPCR検出を試みると、同定しようとする血清型では全ての菌株で3遺伝子が検出できる。その他118血清型では一部の例外を除いて3遺伝子陽性となる血清型は認められない(表1)。
  • 以上の成績から、従来法でサルモネラの分離とO抗原の同定を行い、その後、3つの血清型特異的遺伝子をPCR検出することで、上記血清型を5日で同定可能である。(図1)。
  • Dublin(O9:g,p:-)同定用プライマーペアを用いるとき、Rostock(O9:g,p,u:-)及びNaestved(O9:g,p.s:-)で3遺伝子陽性である。同様にEnteritidis(O9:g,m:-)同定用プライマーペアを用いるとき、Blegdam(O9:g,m,q:-)で3遺伝子陽性である。これらの血清型は遺伝学的に近縁であるため、偽陽性の結果が得られると考えられる。
  • 3つのPCRを組み合わせて行う手法の特性上、近縁血清型以外で偽陽性の菌株が認められる可能性は極めて低いと予想され、本法は高い特異性が期待できる。

成果の活用面・留意点

  • 本法は監視伝染病に含まれる5血清型の補助的同定法として活用できる。
  • 同定しようとする血清型で3遺伝子陽性とならない菌株が出現した場合には、増幅陰性の遺伝子を他の血清型特異的遺伝子に変更することで対応できる。
  • さらに早い段階での同定を可能とするためには増菌培養液からのDNA抽出法等を検討する必要がある。

具体的データ

表1.サルモネラ血清型特異的遺伝子のPCR検出結果

図1.従来法と迅速法の比較

その他

  • 研究課題名:飼料・畜産物の生産段階における安全性確保技術の開発
  • 課題ID:323-d
  • 予算区分:交付金(農研機構重点事項研究強化費)、人畜共通感染症等危機管理体制整備調査等委託事業
  • 研究期間:2006~2007年度
  • 研究担当者:秋庭正人
  • 発表論文等:秋庭(2008)特願2008-177942