わが国の黒毛和牛に認められた非定型プリオンの性状
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要約
非定型BSE(BSE/JP24)プリオンは、牛型プリオン蛋白質過発現マウスに感染し、その生物学的および生化学的性状は定型BSEプリオンとは異なる。
- キーワード:ウシ、牛海綿状脳症(BSE)、非定型BSE、プリオン、異常プリオン蛋白質、感染試験
- 担当:動物衛生研・プリオン病研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:行政・普及
背景・ねらい
近年、非定型の牛海綿状脳症(非定型BSE)が日本、ヨーロッパ諸国および北米で確認されている。非定型BSEの発生起源およびその性状は未だ不明な点が多く、その解明が重要な課題となっている。本研究では、2006年3月に我が国の黒毛和牛(♀:169ヶ月齢)に認められた、非定型BSE症例(BSE/JP24)について、牛型プリオン蛋白質過発現マウス(TgBoPrP)および野生型マウス(ICR)への感染試験を行い、BSE/JP24プリオンの性状を解析する。
成果の内容・特徴
- BSE/JP24プリオンはTgBoPrPマウスに感染性を示す。その潜伏期間(197.7±3.4日)は定型BSEの潜伏期間(C-BSE:223.5±13.5日)よりも短い。
- 定型BSEプリオンはICRマウスに感染する(潜伏期間408±28.2日)が、BSE/JP24プリオンはICRマウスに感染性を示さない(645日以上経過しても発症しない)。
- BSE/JP24プリオンをTgBoPrPマウスで継代すると、その潜伏期間は152.3±3.1日となり、初代と比較して有意(p<0.05)に短縮する。
- BSE/JP24由来の異常プリオン蛋白質は、定型BSE 由来の異常プリオン蛋白質とは異なる糖鎖型を示す (図1)。
- BSE/JP24プリオン接種TgBoPrPマウスと定型BSEプリオン接種TgBoPrPマウスは、脳における異常プリオン蛋白質の沈着像が異なる (図2)。
- BSE/JP24プリオンは、定型BSEプリオンとは生物学的および生化学的性状が異なるプリオンである。
成果の活用面・留意点
- 非定型BSEも感染性を有することから、その蔓延防止対策が必要である。
- 老化に伴う孤発性BSEの疑いも否定できないため、老齢牛に対するBSE検査を継続する必要がある。
- 非定型BSEのヒトへの感染リスクを検討する必要がある。
- 牛体内での非定型BSEプリオンの動態を明らかにする必要がある。
具体的データ


その他
- 研究課題名:プリオン病の防除技術の開発
- 課題ID:322-b
- 予算区分:厚労科研費
- 研究期間:2008~2010年度
- 研究担当者:舛甚賢太郎、舒宇静、山河芳夫(感染研)、萩原健一(感染研)、佐多徹太郎(感染研)、松浦裕一、
岩丸祥史、今村守一、岡田洋之、毛利資郎、横山 隆
- 発表論文等:Masujin et al. (2008) Prion. 2: 123-128