1型血清白濁化因子がStreptococcus suis強毒株集団により強い病原性を付与している可能性がある
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要約
Streptococcus suisの病原因子の一つである血清白濁化因子(OFS)の遺伝子には4つの変異体(1型~4型ofs遺伝子)が存在し、そのうち1型ofs遺伝子がMLST法で最も強毒な株集団として型別されるST1 complexの株に偏って分布する。
- キーワード:豚レンサ球菌、血清白濁化因子、MLST、ST1 complex
- 担当:動物衛生研・細菌・寄生虫病研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
Streptococcus suisは豚レンサ球菌症の主要な原因菌であり、人獣共通感染症の原因菌としても注目されている。近年行われたMultilocus Sequence Typing(MLST)法によるS. suis株の型別の結果、病豚または人患者由来株の多くが遺伝学的に近縁な特定の株集団に属することが明らかとなった。中でもST1 complexと呼ばれる株集団には、豚や人に強い病原性を示す株が多数含まれており、最も強毒な株集団として注目されている。しかし、どのような因子がそれら強毒株集団により強い病原性を付与しているのかという点に関しては明らかになっていない。そこで本研究では、S. suisの病原因子の一つである血清白濁化因子(OFS)の遺伝子について、その多様性と株間での遺伝子の分布状況を調べ、この因子が特定の株集団の強い病原性に関与している可能性があるかを検討する。
成果の内容・特徴
- S. suisの血清白濁化因子(OFS)の遺伝子には、少なくとも4種類の変異体(1型~4型ofs遺伝子)が存在するが、3型および4型ofs遺伝子では点突然変異や挿入配列(IS element)の挿入などにより遺伝子が途中で分断されている(図)。
- 4種類のOFS変異体のうち、動物の血清を白濁化する活性を持っていたのは1型と2型OFSのみである(図)。
- 調べた108株の中では、2型ofs遺伝子を保有する病豚または人患者由来株は存在しない。また、健康豚由来株に比べ、病豚および人患者由来株の方が1型ofs遺伝子の保有率が高い傾向にある(表1)。
- 4種類のofs遺伝子変異体のうち、1型ofs遺伝子がST1 complexの株に偏って分布する(表2)。
成果の活用面・留意点
- 1型OFSはST1 complexに属するS. suis株をより強毒にしている因子の一つであることが示唆される。
- 1型ofs遺伝子は、豚レンサ球菌の最も強毒な株集団を見分ける遺伝子マーカーとして利用できる可能性がある。
具体的データ



その他
- 研究課題名:細菌・寄生虫感染症の診断・防除技術の高度化
- 課題ID:322-e
- 予算区分:交付金
- 研究期間:2007~2008年度
- 研究担当者:高松大輔、大崎慎人、Prasit Tharavichitkul(チェンマイ大医)、高井伸二(北里大獣医)、関崎 勉
- 発表論文等:Takamatsu D. et al. (2008) J. Med. Microbiol. 57(4):488-494