新型牛パピローマウイルスBPV-9は牛の上皮性乳頭腫症の原因となる
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要約
新型牛パピローマウイルスBPV-9は、野外感染例と同様の病変形成過程や組織学的特徴を示す上皮性乳頭腫病変を牛に実験的に再現する。本知見は獣医ウイルス学の新知見であると同時に難治性牛乳頭腫症の防疫対策確立に役立つ。
- キーワード:牛乳頭腫症、牛パピローマウイルス、新型ウイルス、病原性解析、BPV-9
- 担当:動物衛生研・環境・常在疾病研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:研究・参考
背景・ねらい
牛乳頭腫症の原因となる牛パピローマウイルス(BPV)は、これまでに6種類(BPV-1~6)が知られている。近年、新たに4種類のBPV(BPV-7~10)が同定されたが、これら新型BPVと疾病との関連は証明されていない。この内我々が同定したBPV-9は、北日本における難治性牛乳頭腫症の集団発生に関連して検出されることから、牛乳頭腫症を起こす可能性が考えられる。そこで牛への接種試験によってBPV-9の病原性の有無を調べることが、本研究のねらいである。
成果の内容・特徴
- 接種試験の材料として、難治性牛乳頭腫症野外感染牛の10%病変部乳剤を使用した。この材料にはDNA量に換算して一頭あたり1.56×1012コピーのBPV-9が含まれていること、さらに他の遺伝子型のBPVが混入していないことを確認している。
- BPV-9を接種されたホルスタインと黒毛和種には、いずれも4ヶ月後、乳頭皮膚の接種部位に円形で表面が平滑な腫瘍が複数個発生する。これらの腫瘍は接種後の時間経過とともに成長し、8ヶ月後には隣接する病変が融合することでカリフラワー様の一塊の腫瘍病変を形成する(図)。
- 形成された腫瘍は、過角化と有棘細胞層の肥厚を特徴とする上皮性乳頭腫である(図)。これは、BPV-9の野外感染による病変の組織所見と同様である。また実験感染例の病変部の扁平上皮細胞層と顆粒細胞層からBPV抗原が検出され(図)、さらに病変材料から接種したBPV-9と同じ塩基配列の遺伝子断片が検出される。
成果の活用面・留意点
- BPV-9は、ホルスタインと黒毛和種に対して上皮性乳頭腫症を引きおこすことが証明されたため、新たな病原ウイルスとして分類される。
- BPV-9は、近年北日本で流行している難治性乳頭腫症の原因として重要な役割を果たしていると考えられるため、本ウイルスの検査や治療・予防対策の重要性は今後高まる。
具体的データ

その他
- 研究課題名:環境性・常在性疾病の診断と総合的防除技術の開発
- 課題ID:322-g
- 予算区分:交付金(重点強化)
- 研究期間:2007~2008年度
- 研究担当者:畠間真一、菅野 徹、石原涼子、西田朋子(北海道胆振家保)、門田耕一、内田郁夫
- 発表論文等: Hatama et al. (2009) Vet. Microbiol. 136(3-4): 347-351