PCR法による鳥インフルエンザウイルスの亜型判定
※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。
要約
15種類のHA亜型と9種類のNA亜型を同時に判定できるPCR法は、鳥類由来ウイルスの亜型判定の補助検査法として有用であり、増幅産物の塩基配列解析から鶏病原性の推定も可能であり、迅速にまん延防止措置を取ることが出来る。
- キーワード:鳥インフルエンザ、診断、PCR、病原性
- 担当:動物衛生研・人獣感染症研究チーム
- 代表連絡先:電話029-838-7708
- 区分:動物衛生
- 分類:技術・普及
背景・ねらい
鳥インフルエンザウイルスのHAおよびNA亜型を判定する公定法は、抗血清パネルを用いた血清学的検査法であるが、抗原の多様性に起因する反応性の低下、非特異反応、抗血清供給の難しさの問題がある。一方、ウイルスの鶏病原性は、鶏接種試験で調べる方法が公定法となっているが、遺伝子解析から推定することも可能である。公定法を補助でき、簡便、迅速な検査法として、PCR法によるHAおよびNA亜型の判定法を開発し、鶏病原性の推定が可能かを検討する。
成果の内容・特徴
- 本プライマーセットは、遺伝子バンク情報と分離株の塩基配列を基に、H1~H15の各HA遺伝子およびN1~N9の各NA遺伝子と、亜型特異的に反応するように設計されている。
- 本プライマーセットを用いてPCR法を行うと、亜型判定済みのウイルス(120株)の全てのHAおよびNA遺伝子を特異的に検出することができる(表1)。
- 本PCR法は高い亜型特異性を有しており、15種類のHA亜型ウイルス(計41株)と9種類のNA亜型ウイルス(45株)を用いて調べたが、亜型の交差は示さない。
- 本PCR法を用いたところ、越冬カモ由来株と鶏由来株計167株全てのHAおよびNAの亜型を判定することができた(図1)。
- 本プライマーを用いて増幅産物の塩基配列解析を行えば、亜型を確定することができる。
- HA亜型の判定に用いられる増幅部位は、病原性の分子マーカーを含むことから、その塩基配列解析から病原性の推定が可能である(表2)。
成果の活用面・留意点
- 本法は、鳥インフルエンザウイルス(尿膜腔液)の亜型と鶏病原性を判定する際の補助検査法として有用であり、高病原性ウイルスと判定された場合、迅速なまん延防止措置が可能となる。
- 本法は、カモ等の野鳥のインフルエンザウイルスサーベイランスに有用である。
- 自然界には亜型判定が困難なウイルスが存在すると考えられることから、これらの遺伝子情報に基づいて、今後もプライマーを更新していく必要がある。
- 亜型の確定には血清学的検査または塩基配列の決定が必要であり、病原性の確定には鶏病原性試験が必要である。
具体的データ



その他
- 研究課題名:鳥インフルエンザウイルスの迅速亜型判定技術の開発
- 中課題整理番号:322a
- 予算区分:委託プロ(鳥フル)
- 研究期間:2008~2009年度
- 研究担当者:塚本健司、芦澤尚義(千葉県)、中西幸司(滋賀県)、加地紀之(島根県)、鈴木耕太郎、多田達哉、真瀬昌司
- 発表論文等:
1) Tsukamoto K. et al. (2008) J. Clin. Microbiol. 46(9):3048-3055
2) Tsukamoto K. et al. (2009) J. Clin. Microbiol. 47(7):2301-2303