日本脳炎ウイルスワクチン接種馬は西ナイルウイルスの血清学的検査で陽性を示すが、中和法で識別可能である

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要約

日本脳炎ワクチンを接種されている馬は、西ナイルウイルスに対する血清反応で交叉性が認められるが、中和抗体価で5倍以上の反応差が有る場合西ナイルウイルス感染でないことがわかる。

  • キーワード:日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、日本脳炎ウイルスワクチン、交叉反応
  • 担当:動物衛生研・次世代製剤開発チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:行政・普及

背景・ねらい

西ナイルウイルス感染症は、米国での1999年の初発以来流行が続いており、本邦への西ナイルウイルスの侵入が懸念されている。わが国には、日本脳炎ウイルスが常在しており、多くの馬で日本脳炎ワクチンが接種されている。この日本脳炎ウイルスと西ナイルウイルスには共通抗原性が認められ、診断上大きな問題となる。しかし、日本脳炎ワクチン接種馬における西ナイルウイルスの血清反応がどのような挙動を示すかは不明であり、これを明らかにすることは、西ナイルウイルスの防疫体制上重要である。
そこで、日本国内で飼育されている日本脳炎ワクチン(BM3株)接種馬(ワクチン接種は年2回)血清における西ナイルウイルス(NY99 A301株)のウイルス中和試験、ELISA、赤血球凝集阻止反応の3種の血清診断法における交叉反応を検討し、識別可能な方法を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 赤血球凝集阻止反応では日本脳炎ウイルスと西ナイルウイルスに対する抗体価の差は明瞭ではなく、高い交叉反応性が認められる(図1)。
  • ELISAでは西ナイルウイルスおよび日本脳炎ウイルスに対する反応性はP/N比(試料OD/陰性群平均OD)がほぼ同等であり、高い交叉反応性を示す(図2)。
  • 日本脳炎ウイルスに対し90%および50%中和活性が認められる日本脳炎ワクチン接種馬血清において、西ナイルウイルスに対して90%中和では18頭中3頭、50%中和では18頭中9頭で交叉反応を示す(図3)。しかし、日本脳炎ウイルスに対するウイルス中和抗体価が西ナイルウイルスに対する中和抗体価に比較して5倍以上高いので、日本脳炎ウイルスおよび西ナイルウイルスの中和試験を同時に行うことにより区別が可能である(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 日本国内で西ナイルウイルスの血清診断を行う場合には、HIおよびELISAでは日本脳炎ウイルスに対する抗体が強い交叉反応を示すため判別が困難である。ウイルス中和試験では、区別可能であるが、西ナイルウイルスと日本脳炎ウイルスの検査を同時に行う必要がある。
  • ウイルス中和試験では生きたウイルスを使用する必要があるので、その取扱いにはバイオセキュリティ上の注意が必要である。

具体的データ

図1 日本脳炎ワクチン接種馬血清の西ナイルウイルス赤血球凝集阻止

図2 日本脳炎ワクチン接種馬血清における西ナイルウイルスおよび日本脳炎ウイルス抗原を用いたELISA

図3 日本脳炎ワクチン接種馬血清の西ナイルウイルス中和試験

その他

  • 研究課題名:生体防御能を活用した次世代型製剤の開発
  • 中課題整理番号:322i
  • 予算区分:委託プロ(BSE・人獣、鳥フル)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:清水眞也、広田次郎
  • 発表論文等:Hirota J. et al. (2010) J. Vet. Med. Sci. 72(3):369-372