抗ウイルス剤T-1105は口蹄疫ウイルス感染豚からのウイルス排泄を低減する

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要約

抗ウイルス剤であるピラジンカルボキサミド誘導体T-1105は、豚への経口投与により、口蹄疫の臨床症状を抑えウイルス排泄を著しく低減する効果があり、口蹄疫発生初期に発生農家周辺の豚に投与することで流行の拡大を防ぐことが出来る。

  • キーワード:口蹄疫ウイルス、抗ウイルス剤、豚
  • 担当:動物衛生研・国際重要伝染病研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7708
  • 区分:動物衛生
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

口蹄疫ウイルスに感染した豚のウイルス排泄量は牛の最大約2,000倍となり、豚で本病が発生した場合、大流行をもたらす可能性が高い。そのため、数千頭規模の豚に対しても即効性がある感染豚からのウイルス排泄量を低減する方法の開発は、本病の防圧に有益である。そこで、口蹄疫ウイルスに対して増殖抑制効果があり、類縁化合物がインフルエンザ等の治療薬として検討されている抗ウイルス剤T-1105の効果を、牛や豚での病原性が異なる口蹄疫ウイルスに対して検討する。

成果の内容・特徴

  • 抗ウイルス剤ピラジンカルボキサミド誘導体T-1105非投与豚は、口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株を用いた攻撃試験で本病の典型的な臨床症状である水疱形成ならびに跛行や起立障害を示し、鼻汁へ最大約107TCID50/mLのウイルスを排泄するが、T-1105経口投与豚は、O/JPN/2000株接種で症状を示さず、鼻汁へウイルスを排泄しない。
  • 豚に非常に強い親和性を持つ口蹄疫ウイルスO/Taiwan/97株を用いた攻撃試験では、T-1105非投与豚2頭ともに水疱形成ならびに跛行や起立障害を示し、ウイルスを排泄する(図1および2)。T-1105経口投与豚4頭中2頭が、O/Taiwan/97株接種でウイルス接種部位にのみ水疱を形成し、ウイルスを唾液に排泄するが、残り2頭は全く症状を示さず、ウイルスも排泄しない(図1および2)。攻撃後のウイルス分離期間および唾液中排泄量は、T-1105投与豚において大幅に低減する(図2)。

成果の活用面・留意点

  • T-1105は口蹄疫ウイルスによる豚の症状やウイルス排泄を低減可能であり、日本のようなワクチン非接種清浄国で本病が発生した際、発生農家周囲の豚に投与することにより本病の拡大を防止し、摘発淘汰を主体とする防疫措置の確実な遂行に寄与出来る。
  • T-1105を効果的に活用するために、口蹄疫ウイルスに対するその生体内での増殖抑制機序を明らかにし、実用に向けた具体的検討を行なう必要がある。

具体的データ

図1 O/Taiwan/97株接種豚における水疱形成

図2 O/Taiwan/97株接種豚における唾液中のウイルス量の推移

その他

  • 研究課題名:国際重要感染病の侵入防止と清浄化技術の開発
  • 中課題整理番号:322c
  • 予算区分:交付金プロ(口蹄疫・豚コ)
  • 研究期間:2007~2009年度
  • 研究担当者:深井克彦、大橋誠一、小野里洋行、森岡一樹、山添麗子、吉田和生、坂本研一
  • 発表論文等:1) Ohashi S. et al. (2007) EU-FMD会議報告書、10&12 2) Sakamoto K. et al. (2007) EU-FMD会議報告書、418-424 3) Furuta Y. et al. (2009) Antiviral Res. 82(3):95-102 4) 深井克彦ら (2009) 日本豚病研究会報 55:28-32 5) 深井克彦ら (2007) 第17回抗ウイルス療法研究会要旨集、16 6) Fukai K. et al. (2009) OIE/FAO Global Conference on Foot and Mouth Disease Abstract Book 71 7) Sakamoto K. et al. (2010) Foot and mouth disease international symposium and workshop